『不壊の白珠』

神保町シアターのサイレント特集で、清水宏監督の『不壊の白珠』を観る。今回もピアノ伴奏付きで1,500円。 「ふえのしらたま」と読む。何とも古風で雅なネーミング。こんな言葉、今の時代にはなかなか出てこないだろう。英語のタイトルは、「Eternal Heart」…

『麗人』

神保町シアターで『麗人』を観る。サイレント映画の特集で、ピアノ伴奏付き。そのせいか、料金は1,500円。 島津保次郎監督、栗島すみ子主演。昭和5年の作。 栗島すみ子は、男に無理矢理処女を奪われ、生まれた子供は田舎の兄に預け、娼婦的生活で生き抜きな…

四月新橋演舞場 若手花形による『忠臣蔵』

若手花形による『忠臣蔵』は、後に歌舞伎の世代交代やターニングポイントの象徴として語り継がれる場合もあるが、今月の一座は、おそらくそうした伝説とは無関係の、単なる一興行として記録されるに過ぎないであろう。もっともそれは役者に責があるというよ…

4月国立劇場 『絵本合法衝』再演

昨年3月、震災の後の自粛モードで途中公演中止となった仁左衛門の『絵本合法衝』の再演。自分は震災二日後、国立劇場がまだ中止を決めきれないでいた時点に観ることができたので、今回2回目。前回との比較も含めて、改めて面白く観れた。 もっとも、序幕は…

四月平成中村座 昼夜通し

桜満開の浅草。昼夜の合間に、隅田公園を散策。平和な賑わい。 『法界坊』またかの法界坊。まあ、平成中村座のキラー・コンテンツだからなあ。初めて経験するには楽しいだろうが。 冒頭は、串田和美のナレーションで登場人物の紹介。多分録音テープなのだろ…

三月新橋演舞場 夜の部

一体誰が観に行くのかという程の演目立てだが、惰性で行ってしまいました。 『佐倉義民伝』貧乏くさい芝居で嫌いなのだが、平成10年以降、コクーンを含めると今回で5回目の上演。それだけ世の中が不況だからなのだろう。(バブル期前後には一度も上演されて…

三月国立劇場 『一谷嫩軍記』半通し。

「熊谷陣屋」の前に、「堀川御所」と「林住家」のうち「流しの枝」の件だけの二場をつけての上演。「陣門・組討」や「御影浜」は省略した、中途半端な半通し。つけた二場は、他の場を省略したことにより登場人物の整理整合が必要となり、筋を改変、簡略化。…

三月新橋演舞場 昼の部

『荒川の佐吉』序幕の茶屋前の群衆劇が、素人演劇のようでうんざりしていたのだが、昼の30分休憩後の三幕目辺りからは、ようやく持ち直した。といっても、これは真山青果の戯曲の持つ力に助けられてのものであろうが。 染五郎初役の佐吉。さすがに仁左衛門の…

三月平成中村座 勘九郎襲名 夜の部

今回も二階席で観劇。 『吃又』初めて観る仁左衛門の又平。 六代目が作り上げたという、悩める芸術家としての又平ではなく、近代以前の又平像。端的に言えば、深い心理はないが、自分の感情には率直な、人形浄瑠璃の持つ素朴さが伺えた。仁左衛門の又平の嘆…

三月平成中村座 勘九郎襲名 昼の部

勘九郎襲名興行は、新橋演舞場から平成中村座に劇場を移し、二ヶ月目に突入。今日は昼の部。この小屋で初めて二階席で観る。小じんまりとした劇場の全体が見回せて案外良い。 『暫』海老蔵の『暫』。日生の弁慶よりはまだマシだったが・・・。 3年振りの『…

二月新橋演舞場 勘九郎襲名・昼の部

勘九郎襲名の昼の部。夜の部を観に来た時も思ったのだが、新橋演舞場は、ロビーの狭さに加えて照明が暗く、せっかく襲名興行で着飾った客が多くても、その華やかさがさっぱり感じにくい劇場である。結果として、襲名興行を観たんだなあという実感も、何だか…

『J・エドガー』

有楽町マリオン、ピカデリーでクリント・イーストウッドの新作『J・エドガー』を観る。 前作の『ヒア アフター』は、震災の影響で途中で上映取り止めとなってしまい、見逃していたので、イーストウッドの新作は『インビクタス』以来。 FBIの元長官、ジョン…

二月新橋演舞場 勘九郎襲名 夜の部

今月の新橋演舞場は、勘太郎改め六代目中村勘九郎襲名披露興行。夜の部を観る。 『鈴ヶ森』勘三郎の権八に吉右衛門の幡随院長兵衛。勘三郎と吉右衛門の久し振りの共演。まだ全快ではない勘三郎だけに、がっぷり四つという感じではなかったが、二人が同じ舞台…

国立劇場 正月公演

ネットの座席に良いのがなかったので、窓口で当日券。普通に良い席があった。係に聞くと、窓口・電話用とネット用とで別に席を用意しているとのこと。何故別にする必要があるのだろう。 国立の初春公演は、幸四郎一座。一座といっても、幸四郎染五郎親子に福…

新春浅草歌舞伎 一部・二部

浅草公会堂。先日の平成中村座に続き、やはりドブ側での観劇(昼も夜も)。ケータイでのチケット取りは、もう少し慎重に行おう。 第一部 恒例のお年玉挨拶は、亀治郎。もう何年も観てきたが、自分が亀治郎の番に当たったのは初めて。鬘に裃。他の役者の挨拶…

1月平成中村座 昼の部

ケータイからチケット注文、座席を確認せずに行ったら、花道外枠だった。ドブから芝居を観るのは、多分初めて。(歌舞伎座で2階西側から観たことはあったな。)まあ、この小屋は舞台幅がないので、それほど遠い感じはしなかったが。 『鳥居前』新橋と掛け持…

新橋・初春大歌舞伎 昼夜

昼の部 『相生獅子』魁春と芝雀。正月なのに地味な雰囲気は否めない。でも、この二人の踊りは好きだ。後シテ、毛振りのシンクロがゆったりと面白かった。 『金閣寺』菊之助が初役で雪姫。やはり菊之助は、真女形で行くべき。そう改めて思った。観た目の上品…

正月・平成中村座 夜の部

三ヶ月目に突入の平成中村座。今日は夜の部を観る。座椅子になった桟敷席にて。 『対面』勘三郎の十郎は初役とのこと。何だか老けたなあ、と思ってしまった。勘三郎ならではの柔らかさ、江戸前の和事味を期待していたのだが。橋之助の五郎も、今ひとつ。特に…

ル テアトル 玉三郎のお三輪

昨年海老蔵の不祥事休演で急遽正月公演をした玉三郎が、今年も同じル テアトル銀座で初春特別公演。 演目が御殿のお三輪だったので、激戦覚悟でチケット予約に挑んだが、意外とあっさり入手。(しかし、席が前方過ぎて舞台全体を観るには不便であった。)平…

平成中村座 12月 昼・夜

昼の部 昼の部は「菅原」の半通しだが、無人の座組で配役も一貫しない試演会のような芝居で、どうも落ち着かなかった。 『車引』勘太郎の梅王、菊之助の桜丸、彌十郎の松王。 勘太郎の梅王は、カドカドの動きがキッパリしていて、とても気持ちの良い松王。元…

日生劇場 昼・夜 七代目幸四郎追善

今月は日生劇場で、七世松本幸四郎襲名百年と銘打ち、その曾孫である染五郎、松緑、海老蔵での興行。企画としてはなかなか面白い試み。昼夜通しで観る。 昼の部 『碁盤忠信』七代目幸四郎が襲名時の披露狂言。今回はその時以来ということで、すなわち百年振…

12月国立劇場『元禄忠臣蔵』

またかの『元禄忠臣蔵』。作家シリーズ、真山青果ということで。 しかし、今回は吉右衛門が三十年振りに綱豊卿を演じ、もちろん自分も初見、それが楽しみであった。 吉右衛門の綱豊卿は、立派で綱豊卿そのもの。これが三十年振りなのかと思うほど、いつも観…

11月新橋演舞場・昼の部

『吃又』三津五郎の又平、時蔵のおとく。意外と平凡な一幕。三津五郎は、あまり吃りを強調せず、かといって心理的でもなく、自然体ではあるが、どこか物足りなかった。「かか、抜けた」は、声を張る。 彦三郎の将監と秀調の北の方は、手堅い。松也の修理之助…

平成中村座 11月 昼・夜

久しぶりの平成中村座。来年5月までのロングラン興行。今回は旗揚げ時の隅田公園の空き地に戻ってきたが、屋根が二段化し、テントというより、立派なプレハブ劇場。浅草から川沿いに歩いて行くと、小屋の裏側に行き当たる。その位置から川向こうを見ると、…

国立劇場・11月 近松二本

四十五周年記念企画の第二弾で、今月は近松を取り上げ、2作品。しかし、この演目ならば、「歌舞伎を彩る作者たち」という大仰なテーマの特別企画でなく、普通の公演として選択されていたとしても、何ら違和感がない。近松で藤十郎出演なら、他に別の演し物…

十一月新橋・夜の部 菊之助の『娘道成寺』

菊之助が一人で『京鹿子娘道成寺』を踊るのは、平成11年の浅草歌舞伎以来、12年ぶり。以前にも記したが、玉三郎との『二人道成寺』が松竹のキラー・コンテンツとして連発されたことが、菊之助本人が一人で正面からこの大曲に挑むチャンスを奪ってしまったと…

10月新橋演舞場・夜の部『小栗判官』通し

昨日、国立の後、ハシゴで観る。2階の前方席。 亀治郎、澤瀉屋一門に獅童を加えての『當世流小栗判官』。猿之助版で観るのは、平成18年の国立以来。どういうわけか、これが芸術祭参加公演。 国立の時は、一部二部と分けて上演していたが、今回は夜の部のみ…

10月国立劇場『開幕驚奇復讐譚』

正月に続き、10月にも菊五郎劇団の復活新作狂言が出るということは、今度の年末年始には別の企画があるからだろう。と思いながら三宅坂に赴いたら、今月から開場四十五周年企画として、「歌舞伎を彩る作者たち」というテーマでの公演をするらしい。その最初…

10月新橋演舞場 昼の部

『義賢最期』愛之助の義賢。最後の立廻りと仏倒しが見どころとなっているが、芝居としては、その前の髑髏を前にした詮議が面白いところのはず。それがそうなっていないのは何故なのかを考えながら見ていた。役者が揃えば、『寺子屋』や『盛綱陣屋』の首実検…

9月新橋 又五郎襲名・夜の部

『沓手鳥孤城落月』「糒庫」は芝翫休演で、福助の淀君。おそらくは想定内の代役だったのだろう。新又五郎の秀頼、吉右衛門の氏家内膳、梅玉の大野修理之亮。 福助の淀君は、若いだけに動きが多い。身体だけでなく、顔の表情もよく動くのだが、一瞬、口を歪め…