国立劇場 正月公演

kenboutei2012-01-21

ネットの座席に良いのがなかったので、窓口で当日券。普通に良い席があった。係に聞くと、窓口・電話用とネット用とで別に席を用意しているとのこと。何故別にする必要があるのだろう。
国立の初春公演は、幸四郎一座。一座といっても、幸四郎染五郎親子に福助、友右衛門、高麗蔵。こんなに薄い座組で国立とはいえ初春興行をしてしまい、そしてそれなりに客が入っているのが不思議。
三人吉三「大川端」はひどい出来栄え。福助のお嬢、コクーンで観た時は、串田歌舞伎そのものとの相性からか、それほど気にはならなかったが、普通の(?)歌舞伎として観ると、このお嬢吉三は異端。相変わらず顔をゆがめ、変に男臭さを強調。黙阿弥の倒錯美からはほど遠い。力むと顔が猫みたいになり、それが梅玉の顔に似てくる。(福助梅玉は血のつながりはないと思ったが。) 一番驚いたのは、染五郎のお坊吉三に呼び止められた時、「チッ」と舌打ちしたこと。これまで沢山の女形を観てきたが、舞台で舌打ちをした役者は、福助が初めてである。
染五郎のお坊も、姿はまずまずだが、台詞がサラサラしていて、七五調の陶酔感もない。
結果として、いつもあまり感心しない幸四郎の和尚が極めてまともに見えたのであった。
「伝吉内の場」は、平凡。錦吾がなんと伝吉。それだけ無人の芝居ということである。この座組で選ぶなら、むしろ寿猿にやらせた方が面白かったかもしれない。
案外面白かったのは「吉祥院」の幸四郎。これまでの因果がわかっていく様子を、受けの芝居でうまく運んでいった。
「火の見櫓」は、珍しい両花道。上手からお嬢の福助、下手よりお坊の染五郎。それほど効果的ではなかったものの、今後も試みても良いのではと思った。福助のお嬢は、ここでも男臭さを意識しすぎ、あまり魅力的ではない。寿猿の八百屋久兵衛が良かった。
高麗蔵のおとせ、友右衛門の十三郎。
全体的にはひどくあっさりとしていて、座組だけでなく、中味も薄い。ところどころ、普段笑いの起きない場面で観客が爆笑していて(特に福助絡みの場面)、観ていて辛かった。
・・・序幕で「こいつは春から縁起がいいわえ」と正月っぽい台詞があるものの、近親相姦の悲劇を描く暗い芝居は、果たして初春公演に相応しかったのだろうか。(もっと手応えのある出来栄えであれば、そんな思いもしなかったのだが。)
『奴凧廓春風』お口直しか知らないが、所作事で追い出し。最初は「助六」風の格子先。(里長が格子の奥での出語り。)その後、金太郎が祖父の幸四郎と一緒に登場し、奴の凧揚げ。その奴が染五郎で、舞台上で宙乗りとなったり、くるくる回転してセリ落ちするという趣向。奴の隈取り染五郎っぽくなく、しばらく吹き替えだと勘違いしてしまった。
月末近くに観ると、正月気分もあまり実感できない。