10月歌舞伎座 夜の部

kenboutei2013-10-14

『木の実・小金吾討死』
『すし屋』
仁左衛門の権太、秀太郎の小せん、梅枝の小金吾、東蔵の若葉の内侍、歌六の弥左衛門、孝太郎のお里、竹三郎のお米。時蔵の維盛、我当の梶原。
仁左衛門は右肩の腱板断裂で来月からしばらく休演。今も右腕はほとんど使えない状態で出演している。木の実を拾って投げたり、床几を片付けるのも全て左手のみで、その不自由さは観客席からも容易に察せられた。しかし、そうしたハンディがあっても、決して不自然に見えないのが仁左衛門の芸の力でもある。悪事を働く時の凄みとキレ、子供や妻、母親に接する時の愛嬌とぬくもり。こんなに魅力的な権太は、他にいない。母親の膝に顔をうずめる程甘え、妻子を身代わりに差し出す時の、涙をこらえての仕草、腹を切られて述懐中に、弥左衛門の肩や腕にすがりつく、その切なさなど、仁左衛門独特の権太。音羽屋系のすっきりとした権太像とは異なる、上方の匂いのする、リアルで魅力的な男の造形であった。(「小金吾討死」で、小金吾を足で止める型が裏向きになるのは、右肩をかばってのものかと思ったが、以前からそうしていたとの話を聞いた。)
秀太郎の小せんも、可愛らしい色気があって良かった。松島屋兄弟でのやりとりはとても楽しい。孝太郎のお里も安定。
梅枝の小金吾は、前髪姿は良いものの、立ち回りが時折映画のチャンバラ風になるのが良くない。顔立ちが古風なのに動きが現代的過ぎる。
時蔵の維盛は、女形としての仕草が残り、なよなよ。

『四の切』
菊五郎の狐忠信。70歳を超えての「四の切」は、前例があるのだろうか。
狐になってからの動きが厳しいのは是非もないが、しかし、子狐としての情感は十分。前半の忠信は、そこにいるだけで存在感があり、立派。だんだん背中が曲がってきてるのが、少し悲しいが。
静は時蔵で、これも本役。
彦三郎の川連法眼と秀調の飛鳥のやりとりがなかなか良く、ただの埃鎮めに終わらない存在感があった。
梅玉義経

久しぶりの「千本桜」の通しだが、夜の部終了は午後8時40分。ところどころ、いつもの演出からのカット、省略があった。あまりこれが定着してほしくない。