新春浅草歌舞伎 一部・二部

kenboutei2012-01-14

浅草公会堂。先日の平成中村座に続き、やはりドブ側での観劇(昼も夜も)。ケータイでのチケット取りは、もう少し慎重に行おう。
第一部
恒例のお年玉挨拶は、亀治郎。もう何年も観てきたが、自分が亀治郎の番に当たったのは初めて。鬘に裃。他の役者の挨拶に比べると、芝居っぽい「口上」であった。
南総里見八犬伝発端の春猿の伏姫が良い。若手中心の座組の中では、貫禄も感じられた。
亀治郎の蟇六、竹三郎の亀篠の老夫婦。竹三郎が弾けて楽しい。お羽黒姿で巨体を殺す仕種がなかなかチャーミング。ピョンとジャンプする元気さもあって何より。亀治郎は、相変わらず達者に強欲爺を演じこなすが、型に嵌まった役づくりにも見えてしまい、その器用さがかえって徒になっているような気がする。演技の多少うまいお笑い芸人が演じるコントのような芝居で、果たして良いのか。
亀鶴の左母二郎、敵役としてサマになっていた。重宝の刀をすり替えた時、「こうしておけば、おっとよしよし」と『伊勢音頭』と同じ台詞が出てくるが、そういうものなのか。
だんまりで八犬士が揃うのだが、ひと目では全員を判別できず、筋書で確認。種之助、米吉、隼人など、ついこの前まで子供だと思っていたのが、こうして浅草歌舞伎の一翼を担うようになったのだなあ。舞台上でまだウロウロしているだけで、とてもだんまりには見えなかったが、それでも彼らにとっては記念すべき舞台であろう。
愛之助の犬飼現八、薪車の犬川荘助、巳之助の犬村大角、歌昇の犬塚信乃。亀治郎が二役、犬山道節で締める。壱太郎の娘浜路。
『吉田屋』愛之助初役の伊左衛門。もちろん仁左衛門直伝の松嶋屋型。
最初にして最大の難関である花道の出。愛之助の伊左衛門は、柔さを意識しすぎたのか、女形の歩みに近くなっており、仁左衛門の時に強く感じる、文楽人形のような動きの面白さはなかった。本舞台に入ってからも同様で、上方和事とはいえ、「総身が金じゃ」と空威張りすることに象徴される、伊左衛門の意地というか、ある程度の芯の強さも、ほの見えた方が良いと思った。
壱太郎の夕霧。まだこの大役は荷が重いという感じだが、何故か壱太郎のアヒル顔は愛嬌があって、不思議な魅力がある。
太鼓持が知らない役者。確認すると上村吉太朗我當の部屋子らしい。

第二部
お年玉挨拶は薪車。浅草は初参加とのこと。
『敵討天下茶屋聚』ついこの前の5月に幸四郎で観たばかりだったので、またかと思ったが、こちらは猿之助バージョン、全く違った芝居であり、とても面白かった。
新橋の幸四郎の時のように、中途半端に早瀬一家の苦難や東間の敵役としての凄みを描かずに、徹底して元右衛門にフューチャリングした猿之助演出の潔さが、亀治郎にもきちんと伝承されており、何も考えずに舞台を楽しめた。
昼の部では嫌味にも感じた亀治郎の器用さも、元右衛門の場合はそれが見事に昇華されていて、率直にうまい。これまでも猿之助の代表作を次々とこなしてきた亀治郎だが、今日の元右衛門は猿之助より猿之助っぽくて、継承作としては一番ニンであったと思う。観客席を使っての追い掛けっこや、殺される前のチャリも、大いに沸かせる。もっとも、もう一役の方の造酒頭の方は、それほど面白くなかった。
愛之助の東間は、昼の二役より存在感あり。亀鶴の早瀬伊織も良い。
巳之助の早瀬源次郎が大奮闘。こんなにたっぷりと巳之助の芝居を観るのもあまり記憶がない。(巳之助はフィギュア好きだったのか。)
壱太郎の葉末、やっぱりアヒル顔でおもしろ可愛い。
春猿の染の井。
  
昼夜ともに女性比率が圧倒的に高い。同じ浅草でやってる平成中村座以上。
夜の部には、五木ひろしが観劇していた。
午後7時前には終了。手軽な観劇スタイルも、人気の秘密か。