11月国立劇場 「伊賀越」通し

kenboutei2013-11-04

『忠臣蔵』通しで沸く歌舞伎座に対し、国立劇場は、藤十郎ファミリー中心で『伊賀越道中双六』の通し。
無人の一座でどこまでできるかと思ったが、案外の上出来で面白かった。

いつもの「沼津」の前に、「行家屋敷」、「饅頭娘」、「奉書試合」がつく。沢井股五郎の所業と、政右衛門の敵討ちへの参画の過程がよくわかり、通しとしての意義があった。これに「岡崎」がつけば、もっと良かったのだが。
通しとしても観る価値はあったが、芝居の完成度としてはやはり「沼津」である。藤十郎の十兵衛、翫雀初役の平作、扇雀のお米。
藤十郎は高齢のせいか最近は踊りや軽い負荷の役ばかりだったので、当初大丈夫かと不安であったが、実に若々しく、驚異的な十兵衛となった。自在な芝居とはこのことで、見ているだけで面白かった。
一方、翫雀の平作は、先月の三婦に続いての老け役で気の毒に思ったが、むしろ生き生きと演じていて、新境地を開いた感がある。三婦の時もそうだったのだが、変に老け役を意識しないで地を出しながら演じていたのが、かえって自然に老人の滑稽さや頑固っぷりを表現できていて、良かったように感じた。
「千本松原」での親子の別れは、結構ジーンときた。(演じている役者は親子逆転しているのだが。)
扇雀のお米が、意外な程しっとりと演じ、なかなか良かった。
橋之助の政右衛門、孝太郎のお谷。初めて観る「饅頭娘」も、この二人がうまく芝居を作っていた。萬次郎の柴垣、彦三郎の宇佐美も安定。
鶴亀の孫八、虎之介の志津馬。
翫雀が二役で誉田大内記。
市蔵が敵役の股五郎、その仲間桜田林左衛門が亀蔵