10月歌舞伎座・昼の部

kenboutei2013-10-13

今月は昼夜で義経千本桜』の通し。菊五郎劇団、吉右衛門一座、藤十郎仁左衛門梅玉等勢揃い。それぞれの持ち役を分担しているので、通し狂言としての統一性は薄いけれど、各幕充実の舞台で、現代歌舞伎の一つの水準を示していたと思う。
『鳥居前』松緑の忠信、梅枝の静、亀三郎の弁慶、菊之助義経。若手中心で気持ち良いが、完成度は今一つ。梅枝の静にしろ、亀三郎の弁慶にしろ、花道の出でそれらしい雰囲気になっていない。共に期待している役者なだけに残念。一方、松緑の忠信は、花道引っ込みはまずまず。菊之助義経が一番安定。ただ、義経のニンではないと思う。亀寿の笹目忠太。
歌昇、隼人、米吉、種之助で四天王。自分も年を取るわけだ。
『渡海屋・大物浦』吉右衛門の知盛、芝雀典侍の局、歌六の弁慶、梅玉義経又五郎の相模五郎、錦之助の入江丹蔵。
さすがの吉右衛門。今までに比べて特筆すべきものは感じられなかったが、スケールの大きさ、力強さは観る者を圧倒させる。知盛となってから、源平の争いと平家の没落について述懐する台詞の良さが吉右衛門の魅力。最後の入水も立派で言うことなし。
梅玉義経が本役、芝雀典侍の局も良い。
本格の『渡海屋・大物浦」であった。
吉野山菊五郎の忠信、藤十郎の静。このコンビは初めてとのこと。それほど期待していなかったのだが、何とも言えない味わいがあって、思わずのめり込んで観ていた。既に両優、高齢で動きにキレはないけれど、その佇まいと、共に義経を思う情感が身体中から滲み出ているのが、良かった。屋島の戦物語も踊りというよりむしろ芝居っ気のある振りで、とても面白かった。ただただ二人が動くのをいつまでも観ていたいと思った。
團蔵の逸見藤太も飄逸で、この二人に負けない存在感を出していた。(亀三郎の笹目忠太との差は歴然。)