11月歌舞伎座 忠臣蔵通し 昼夜

kenboutei2013-11-03

新しい歌舞伎座で、ようやくの『忠臣蔵』通し。
来月も配役を替えて2ヶ月連続での『忠臣蔵』という趣向で松竹役者総出だが、同じ2ヶ月連続なら、二段目や九段目、十段目もかけたり、『四谷怪談』と合せたりなど、もっと工夫の余地があるだろうに。
 
菊五郎の判官、勘平が、ともに本役で素晴らしかった。特に勘平は、五段目の流れるような動きと形になった時の美しさ、六段目でも寸分の隙もない芝居運び。鞘から抜けた刀身で髪を直す一連の動作は、完璧。もしかしてこれが最後になるのかとも思わせる程、入魂の役であった。大序・三段目の判官もさすがの気品。
吉右衛門は由良之助。四段目と七段目の由良之助を一度にやるのは初めてとか。四段目は、肚に感情を抑えた芝居に迫力と大きさがあった。菊五郎とのやりとりの緊迫感も、ただならぬものがあった。(菊五郎の判官の「かたみ」から「かたき」への台詞の変化も面白かった。)
七段目は、全体的に抑え気味。スラスラと運んでいく。多少声も弱く感じたが、しかし張るところはしっかり張って聴かせるのはさすが。「太太神楽」のところは愛嬌もあって面白い。他を圧倒するところまでではなかったものの、立派な由良之助であることには変わりなかった。
福助のお軽(七段目)はまずまず。時々顔や声に地が顕れるのさえなければ。
気の毒なのは梅玉の平右衛門。ニンにない役。ソツなくやっているが、やはりつまらなかった。
梅玉は他に若狭之助と道行の勘平だったが、この二役は本役で立派な出来。しかし、松竹は梅玉をあまりにも便利に使い過ぎているのではないか。(梅玉も安易に受け過ぎだと思う。)
六段目と道行のお軽は時蔵。どちらもあまり精彩がないように感じた。
左団次は大序・刃傷では師直、四段目は石堂、六段目は不破数右衛門と、仁左衛門休演の影響とはいえ、この割り当てでは、見ている方は混乱。
芝雀の顔世、梅枝の力弥(四段目)、松緑の定九郎。一文字屋お才に魁春七之助の直義。
東蔵のおかやがうまく、菊五郎の悲劇を引き立てた。
團蔵の道行の伴内が自在で面白かった。
鷹之資が大詰の力弥で久しぶり。

(その後、福助休演で芝雀が七段目のお軽に。こっちの方が見たかったかも。)