新春浅草歌舞伎 一部・二部

kenboutei2014-01-02

今年の初芝居は浅草から。一部二部通しで観る。
第一部
お年玉挨拶は猿之助。終始舞台上から様式的に。初日ゆえか、猿之助にしては珍しく、言葉に詰まったり、噛んだりしていた。
『義賢最期』
愛之助の義賢、壱太郎の小万、橘三郎の九郎助、吉弥の葵御前。
前半はウトウトしあまりはっきりしない。後半、愛之助の立ち回りは堂に入って大きく見えた。仏倒しも迷いなく、見事な倒れっぷり。反動で身体が浮いたほど。壱太郎の小万は、少しなよなよし過ぎて、力強さに欠ける。橘三郎の九郎助、最初寿猿と思っていたが、違った。吉弥の葵御前はこの座組では少し老けすぎか。
『上州土産百両首』
猿之助の正太郎、巳之助の牙次郎。初めて観る芝居。
初演時は藤山寛美がやったというドジな牙次郎役を、巳之助が熱演。結果として巳之助初めての当たり役となったようだ。
登場時は、かなり痴呆めいた言動で、序幕だけの単なる端役なのかと勘違いした程だが、阿呆ながらも、訥々と自己主張する様子が、巳之助の素朴で正直な印象と重なり、味わいある役になっていた。
もっとも、初演が藤山寛美であったことを想像すると、この役はもっと違う造形であったであろう。寛美の場合は、阿呆を演じつつ、そこに鋭い人間批判を内包した、芯の太さがあったと思うが(観てないのであくまで想像だが)、巳之助の阿呆はまだ表層的。それにも拘わらず、主役の猿之助を食う程観客を沸かせていたのは、単に脚本の良さだけにとどまらない、巳之助の努力の成果である。
猿之助の正太郎も、幼馴染みへの友情も良く表現できており、これも巳之助同様、自身の持ち役の一つとなっていくのではないか。
亀鶴のみぐるみ三次が良い。顔の凄みといい、根暗な悪役をうまく演じた。
男女蔵が人の良い親分役、金的の与一。
一座の熱演に観客も反応、隣の男性客は最後泣いていた。本日昼夜通じて一番。
 
終演は押しに押し、25分延びた。

第二部 25分遅れで開演。
『博奕十王』
これも観たことない演目。今の猿翁の創作舞踊。
博奕打が死んで地獄に行くが、そこで閻魔大王と賭博し、閻魔大王の身ぐるみをはいだ上、天国へ行く。
松羽目物で『勧進帳』などをアレンジしている模様。博奕打に猿之助閻魔大王男女蔵。サイコロはフジテレビの『ごきげんよう』の「何がでるかな」みたい。
引っ込みで猿之助の六法。将来の弁慶の布石か。
『新口村』
愛之助、壱太郎、橘三郎。
愛之助の忠兵衛、何度も演じているのかと思ったら、初役とのこと。もう仁左衛門そっくりという評ではなく、愛之助として観ることができる。
壱太郎の梅川も初役。相変わらずクネクネナヨナヨしていて、仲居に見えてしまうのが良くない。しかし、この若さで義太夫狂言をしっかり演じているのは立派。
橘三郎の孫右衛門が初役かどうかは知らないが、幹部昇格早々の抜擢。しかし、義太夫味がなく、台詞に面白味がない。本来主役でもあるはずのこの役が脇役にしか見えないのは、まだ荷が重すぎるということか。
セットがいつもとは異なる印象。
『屋敷娘/石橋』
若手での舞踊。
「屋敷娘」は、米吉、梅丸、壱太郎。米吉はぽっちゃりとしていて若手女形としては今時珍しい。どこか梅幸を彷彿とさせる、貴重な体型。しかし、踊りは未熟そのもの。振りもまだ身についておらず、他人のを見ながら恐る恐る踊っていた。梅丸は、地味だが好印象。多少胸を反りすぎるが、多分教わったことを必至にやっているからだろう。壱太郎は、この中ではさすがに一日の長。やっぱりクネクネしてるが。
「石橋」は隼人、種之助、歌昇。この中では歌昇が抜群なのは言うまでもないが、種之助も案外良かった。隼人は全く踊りになってない。毛振りは、足元の安定感の違いがはっきりわかる。「石橋」なのに、石橋が出てこなかった。