10月国立劇場『開幕驚奇復讐譚』

kenboutei2011-10-16

正月に続き、10月にも菊五郎劇団の復活新作狂言が出るということは、今度の年末年始には別の企画があるからだろう。と思いながら三宅坂に赴いたら、今月から開場四十五周年企画として、「歌舞伎を彩る作者たち」というテーマでの公演をするらしい。その最初に取り上げる作者が、滝沢馬琴。歌舞伎と馬琴との関わりはないわけではないが、近松、南北、黙阿弥といった作者に比べるとその関係性は薄いので、あまりピンとこないのだが、まあ、菊五郎の恒例企画と四十五周年企画テーマとの折衷があったのかもしれない。
馬琴だろうが誰だろうが、菊五郎劇団の新作なので、原作の内容や過去の上演などを考察しても始まらない。歌舞伎ショーとして面白いかどうかが全て。
結論から言うと、今回は、まあ面白い。見た目に楽しく、スピーディー。かつての猿之助歌舞伎のお株を、今は菊五郎が奪っているといったところだ。休憩を除けば正味2時間半。身体も楽だ。(特に最近の自分には。)
序幕、暗転の中、巨大な石柱のようなものが屹立し、顔だけがライトで浮かび上がって、その顔が下に落ちることで首を斬った様子を見せる演出が面白かった。
他には、菊五郎が上手、菊之助が下手でともに宙乗りを見せる場面が良い。両花道上の(実際には仮花道は設置していないが)「両宙乗り」は、初めて観た。菊五郎が乗っかる白狼の操作を、菊五郎自身が行っていたのも面白かった。また、この両宙乗りでは、菊五郎菊之助に術を伝授するという趣向で、宙乗りになりながら二人の掛け合いがあったのも新鮮であった。今後、例えば黙阿弥の渡り台詞を両宙乗りでやるようなことも、考えられるのではないか、と思った。
とにかく、理屈抜きに楽しめる芝居であり、それ以上でも以下でもない。「歌舞伎を彩る作者たち」などという大仰なテーマに乗っかるのではなく、鑑賞教室なんかで見せた方が、歌舞伎の間口を広げる上では良いのかもしれない。