歌舞伎

六月新橋演舞場 夜の部

『吹雪峠』 吹雪の中の山小屋という密室で、女を寝取られた男と、寝取った側の男女が偶然出会う心理劇。コキュ側のやくざの兄貴分に染五郎、寝取った男に愛之助、女は孝太郎。切羽詰まった極限状態での人間の愚かさを描くが、今の目から観ると陳腐。真面目な…

六月新橋演舞場 昼の部

『頼朝の死』 染五郎の頼家、時蔵の政子、愛之助の重保、孝太郎の小周防、歌昇の広元。 染五郎の台詞は、低音で平板、言葉の内容と台詞の抑揚に調和がなく、青果の台詞劇としては響いてこない。一方、他の役者の台詞は、言葉の内容に捕らわれすぎて感情表現…

五月新橋演舞場 昼夜

昼の部 『敵討天下茶屋聚』 幸四郎が初役で元右衛門と東間の二役に挑む。この二役を一人の役者で演じるのは、天保以来とのこと。更に、いつもの上演形態に加えて前の場も出し、早瀬家が敵討に至る経緯を丁寧に描く。 結果としてわかったのは、この芝居の主役…

前進座5月公演『秋葉権現廻船噺』

国立劇場での前進座5月公演。 『唐茄子屋』 落語が題材の世話物。勘当された放蕩息子が、叔父さんの世話で唐茄子売りとなり、下町長屋の住人の親切に触れて改心する人情噺。放蕩息子に芳三郎、叔父さんに村田吉次郎、叔母さんがいまむらいずみ、長屋の住人…

16年振りの明治座歌舞伎 昼夜通し

都心のアクセスでは自分にとって歌舞伎座以上に至便な明治座での歌舞伎公演は、16年振りだという。これまで舞台機構は整っているのに、松竹直系の劇場ではないためか、あまり歌舞伎が掛からないでいたのが残念であったのだが、これを機に度々上演してほしい…

新橋演舞場 四月夜の部

『絵本太功記』「太十」は、「鎌三」と並んで、観ているうちに眠りに落ちてしまう、「居眠り狂言」。今日もまた寝るかなと思っていたが、意外と眠らずに最後まで見届けられた。 といって、面白かったのかというと、実はそうではない。 結局、コクのある義太…

四月新橋演舞場 昼の部

『お江戸みやげ』 三津五郎、翫雀。二人とも田舎訛りが典型すぎるが、芝居としては面白かった。 三津五郎のお辻は、酔って気前が良くなるという変化に、あまり説得力がなかった。翫雀のおゆうは、ややうるさい。 錦之助の役者が、色気があって良い。舞台裏の…

三月新橋演舞場夜の部(2回目)

歌舞伎初観劇者同伴で、夜の部2度目。 『浮舟』最後の一幕から入ったのだが、結局は、この幕だけで十分であったということがわかる。吉右衛門の台詞は、ようやくスムースになっていた。浮舟の寝所に入り込もうと、勢い良く進むが、柱をぐっと掴んで一旦止ま…

三月新橋演舞場 夜の部

震災、計画停電の影響だろう、休日としてはあまり記憶にない程のガラガラ。交通手段を気にしてか、幕間ごとに、人が減っていった。 『浮舟』 北條秀司が『源氏物語』の宇治十帖を題材に創作した、コキュの物語。 菊之助の浮舟、吉右衛門の匂宮、染五郎の薫。…

三月国立劇場 仁左衛門の『絵本合法衢』

南北の『絵本合法衢』については、東宝歌舞伎で復活した経緯が、千谷道雄の『幸四郎三国志』や、最近の『演劇界』の記事で紹介されていて興味を持ち、自分も坪内逍遥と渥美清太郎共編の「歌舞伎脚本傑作集」を入手、「予習」して臨んだ。 原作は、登場人物が…

新橋3月歌舞伎 昼の部

歌右衛門十年祭追善興行。今日は昼の部のみ。ガラガラとまではいかないが、空席は目立つ。 『恩讐の彼方に』 久しぶりの虫干し狂言(←造語)。もちろん初見だが、あらすじを読むと、敵討ちの相手と一緒に洞窟を掘るという話で、むかし子供の頃に読んだ記憶が…

二月テアトル・花形歌舞伎 通し

亀治郎、染五郎による花形歌舞伎。 第一部 『お染の七役』 猿之助バージョンは初めて観るが、序幕の第一場「柳町妙見」で、七役全てを見せるというのが、原作以上の猿之助の工夫らしい。しかし、亀治郎が受け継いで演じる序幕の七役は、何だか精彩に欠け、ど…

正月国立劇場

正月の国立劇場は、菊五郎劇団。もはや音羽屋の新たな家の芸として、十種くらい選定するのではないかという勢いで毎年繰り返す、復活実ハ新作歌舞伎シリーズ。(或いは、他の劇場では再演されるはずもないだろうから、「国立劇場歌舞伎」と称しても良いかも…

正月浅草歌舞伎 第二部

正月浅草のショート歌舞伎。しかし、第一部と違って内容のともなう、良い舞台であった。 『壺坂霊験記』嫌いな狂言だし、去年も観たばかりだし(とはいえ殆ど覚えていないが)、全く期待していなかったのだが、意外や、なかなかの掘り出し物。 七之助のお里…

正月浅草歌舞伎 第一部

『三人吉三巴白浪』 「心がなければ芝居にならないけれど、それだけじゃ歌舞伎は成り立たない。(中略)すべてをリアルにやったらチープになってしまう。だけどそこに技術が入るともの凄く芝居が膨らむ・・・。」 これは、筋書のインタビューで、七之助が語…

正月新橋演舞場 初日・昼夜

本当は明日(3日)、テアトルで海老蔵の初日を観る予定だったのだが、あえなく中止となってしまい、玉三郎の阿古屋では食指が動かず(チケットもすぐ売り切れたそうだが)、結局新橋の初日に来てしまった。やはり歌舞伎座の正月初日に比べると、地味だよな…

十二月日生・菊之助の玉手

今年の歌舞伎の見納めは、日生劇場の『摂州合邦辻』の通し、菊之助東京初役の玉手の千秋楽。寒い寒いクリスマスの夜、自転車で日比谷に駆け付ける。自分の好きな演目を、自分の好きな役者で観ることができ、良い見納めとなった。 『合邦』の通しは、国立劇場…

十二月国立劇場・忠臣蔵の疑似通し

12月の国立は、幸四郎一座の『仮名手本忠臣蔵』。大序なし、五、六段目もない。三・四段目とお軽勘平の道行、七・十一段目という変則的な半通し。 最初の三段目、幸四郎は師直役だが、なんと花道から登場してきたので、驚いた。七三で立ったその顔は、ポスタ…

11月新橋演舞場・夜の部

『逆櫓』段四郎の権四郎が秀逸。殆どこの芝居の主役といっても良い活躍振りであった。いつもの段四郎とは違って(?)台詞も良く入っていて、初役とは思えない。自分の中では、又五郎の権四郎に匹敵する。 幸四郎の樋口、剥き身の隈取りが似合っている。「権…

11月新橋・昼の部『河内山と直侍』

幸四郎の河内山で通しといえば、国立で平成15年、17年と2度もやっており、さらに河内山だけのは去年の9月に歌舞伎座で出たばかり。加えて菊五郎の直侍も、一昨年の10月に歌舞伎座で観た。 そのため、今月の演目を知った時は、またかという感じで殆ど期待し…

11月国立『国性爺』通し

『国性爺合戦』を歌舞伎で観るのは、平成15年4月の歌舞伎座以来。その時は「平戸海岸」「千里ヶ竹」「楼門」「甘輝館」「紅流し」「元の甘輝館』という構成で、今回は、序幕に「大明御殿」がついて、通し狂言と銘打っての上演。 しかし、「大明御殿」は、義…

新橋演舞場 十月夜の部

『盛綱陣屋』仁左衛門の盛綱、自分は初見。実に立派で大きく、良い盛綱であった。一昨年の吉右衛門も良いと思ったが、今日の仁左衛門の方が、より自分好みの盛綱。仁左衛門の持ち味である情愛に、心を打たれた。 孫を討てと迫る時の母・微妙への態度や、首実…

十月国立劇場 真山青果二本

『天保遊侠録』一年前に歌舞伎座で、橋之助の小吉で観たばかり。吉右衛門の小吉は、甲の声を多用し、若々しさや短気な性格を表しているようだったが、まだ台詞がスムースに出てこず、小吉の快活感はあまりなかった。 それでも、子供(後の勝海舟)を手放さな…

十月新橋 昼の部

昼の部を観る。先月同様、入りが悪いが、この演目でこの出来では、むべなるかな。 『頼朝の死』梅玉の頼家、魁春が初役で政子。錦之助の畠山、孝太郎の小周防、左團次の大江。 序幕からどの役者も真山青果の台詞になっておらず、台詞が良くなければ、この芝…

新橋演舞場 秀山祭 夜の部

秀山祭、夜の部を観る。一階の結構良い席でも空席が目立った。 『猩々』梅玉と松緑の猩々に芝雀の酒売り。梅玉、松緑の猩々は、ゆったりとした感じの動き。あまり酒好きの動物には見えなかった。 『俊寛』吉右衛門の俊寛。福助の千鳥、染五郎の少将、歌昇の…

九月新橋 秀山祭 昼の部

九月の新橋は歌舞伎座から移っての秀山祭。昼の部を観る。 『月宴紅葉繍』梅玉、魁春兄弟の舞踊。何だか前の歌舞伎座でも観たような光景。すぐに眠くなってしまうのも、歌舞伎座の時と同じ。 『沼津』吉右衛門の十兵衛、歌六の平作、芝雀のお米、歌昇の安兵…

8月新橋演舞場 二部・三部

今日は二部、三部を続けて観る。 第二部 『暗闇の丑松』橋之助の丑松、扇雀のお米、獅童の料理人祐次、福助のお今、彌十郎の四郎兵衛。 橋之助、扇雀、ともに初役。ちょっと台詞が感情的で騒々しい。特に扇雀はうるさい。しかし、引付座敷で、死を覚悟した憂…

八月新橋演舞場 第一部初日 海老蔵の「狐忠信篇」

八月の演舞場は、花形歌舞伎で、歌舞伎座での納涼歌舞伎と同様、三部制。 今日が初日で、行ってみるとカメラスタッフが結構いる。中へ入ると、ちょうど海老蔵夫人となった小林麻央が、義母の團十郎夫人と一緒にロビーに出てきたところで、観客とテレビカメラ…

大阪松竹座 七月歌舞伎・昼夜通し

大阪出張のついでに、観に行った。初めての松竹座。ロビーからエスカレーターを使い、2階の売店ロビーを通り、更にエスカレーターで昇り、3階のフロアがようやく1階の客席。明治座みたいな感じ。舞台、客席の広さは、新橋演舞場程か。傾斜があるので、演…

新橋演舞場 七月大歌舞伎 夜の部

『暫』以前は、歌舞伎十八番の『暫』がかかるとなると、一も二もなく喜び、わくわくしたものだが、今は、何だか食傷気味のような気分になる。 團十郎の『暫』自体は、平成15年以来だから7年振りなのだが、それ以降、海老蔵が襲名時と去年も手掛けており、ま…