四月新橋演舞場 昼の部

kenboutei2011-04-03

『お江戸みやげ』
三津五郎翫雀。二人とも田舎訛りが典型すぎるが、芝居としては面白かった。
三津五郎のお辻は、酔って気前が良くなるという変化に、あまり説得力がなかった。翫雀のおゆうは、ややうるさい。
錦之助の役者が、色気があって良い。舞台裏の役者の雰囲気があった。扇雀の母親役、いじわるで冷たい雰囲気が、似合っていた。
右之助の女中が良かった。
『一條大蔵譚』
菊五郎の大蔵卿というのは、観たことがないので、楽しみにしていたのだが、あまり良くなかった。時蔵常盤御前とともに、あまりに淡白すぎる。どこをとっても面白くない。
團十郎の鬼次郎、菊之助のお京の夫婦は、まあまあ。團十郎は、台詞にいつもの力みがなく、聴きやすかった。
『封印切』
結局、昼の部ではこれが一番面白かった。
藤十郎の忠兵衛は、相変わらず自在な演技で素晴らしい。最後の引っ込みのしつこさも、藤十郎ならではで、観ていて楽しかった。
秀太郎のおえんとのやりとりも上方の味わいがたっぷり。門外で、忠兵衛に耳打ちするところの二人のやりとりなんかの面白さ。また、藤十郎のしつこくて長い花道の引っ込みを、下手でしっかり見送る間を保てるのも、秀太郎のうまいところであろう。
同じく我當の治右衛門も、うまかった。台詞や振る舞いに力強さがあり、上方風の男伊達の境地を見せてくれた。
こうした上方の濃厚な役者陣の中では、三津五郎の八右衛門は、破綻はないものの、精彩を欠いたきらいがある。
梅川を演じた扇雀は、『お江戸みやげ』程には印象に残らない。