『乙女ごころ三人姉妹』

神保町シアター、本日二本目。
成瀬の初のトーキー。昭和10年
タイトルからすると、女三人姉妹の純情な恋愛話のようなものを想像するが、母親の命令で三味線の門付で働かされている真ん中の娘を中心にした、暗いお話。原作は川端康成の『浅草の姉妹』。
三女の梅園龍子が案外チャーミング。寿美花代江利チエミに何となく似た雰囲気。浅草でレビューガールをしているのだが、水着っぽい衣装で踊る振り付けが面白い。それを観ている観客に、黒い布のマスクをしている学生服の生徒も混ざっている。
長女の細川ちか子は地元の不良娘で、既に男を作って家を飛び出していたのだが、病気となった男の実家に旅立つ金策のため、浅草に舞い戻り、昔の仲間を頼ってひと稼ぎ。その仕事が、三女の梅園の恋人を強請る手引き。その現場をたまたま見た次女の堤真佐子が身体を張って、妹の恋人を守る。・・・本当に川端康成は、こんな話を書いたのだろうか。
当時の浅草の賑わいを描く冒頭のカットが面白いが、場割りが早過ぎて、じっくりと映像を見られないのが残念。
浅草の松屋の屋上に、ロープウェイが運行しているのに、驚いた。
堤真佐子はここでは門付芸者だが、さっき見た『女人哀愁』では、入江たか子の従姉妹の女学生。家の中で男の子と取っ組み合いのケンカをするような子供っぽい役で、全然イメージが違った。
そういえば、三女の恋人役の大川平八郎も、『女人哀愁』に出ていたな。(入江たか子の義理の姉に振られてつきまとうストーカーだった。)