『殺人者たち』

kenboutei2008-04-27

開封のDVDボックス消化シリーズ(?)、今回はドン・シーゲル・コレクションから、『殺人者たち』。
いきなり盲学校の受付孃を容赦なく脅し、目的の人物をあっさり射殺する、リー・マービンと相棒(クルー・ギャラガー)の殺し屋二人組。その無慈悲さが衝撃的。殺した相手(ジョン・カサヴェテス)が抵抗しなかったことに疑問を持ち、その理由と、過去にカサヴェテスが関与した現金輸送車強盗による100万ドルの行方を探る旅に出る。関係者を問いつめる毎に挿入される回想シーンにより、過去の経緯が明らかにされる展開は、時に退屈な部分もあったが、とにかくリー・マービンとクルー・ギャラガーの冷徹な詰問・拷問ぶりがスタイリッシュなハードボイルドで、後の映画に大きな影響を与えていることは間違いない。
リー・マービンの声と佇まい、背広姿で銃口を向ける型の良さ。まさに、The Killer。ラスト・シーンの死に方も忘れ難い。
当初はテレビ映画として撮影されたが、ちょうどケネディ大統領暗殺事件が起こったため、劇場公開に変更されたという。確かに、ビルの高所から地上のリー・マービンらを狙撃する場面は、あのダラスの教科書倉庫6階のアングルを思い起こさせずにはいられない。そういえば、この映画全体に漂う、乾いた混沌さのようなものも、当時の空気を反映しているような気がする。
後の大統領、ロナルド・レーガン(当時はリーガン)が、現金輸送車強盗の黒幕として登場。オールバックの髪形でのスーツ姿は、大統領の時の容姿とそれほど変わらず、それが女を囲い、警官に化けて輸送車を襲い、殺し屋に殺人を依頼し、その殺し屋まで自ら殺そうとする悪の首領なのだから、今観ると非常に面白い。
レーガンの愛人役のアンジー・ディッキンソンは、あまり魅力的ではなかった。
原作がヘミングウェイで、脚色は『宇宙大作戦』のジーン・L・クーン、音楽がジョン・ウィリアムスという、豪華キャストも納得できる、見事な傑作。
同じ原作でこれ以前に作られた、ロバート・シオドマク版の『殺人者』もいずれ観てみたい。

殺人者たち [DVD]

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ドン・シーゲル コレクションDVD-BOX

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