『突破口!』

kenboutei2008-05-03

引き続き、ドン・シーゲル・コレクションから。
監督の最高傑作との評もある、『突破口!』。
原題は、「CHARLEY VARRICK」という、主人公である銀行強盗の名前。(邦題の方は、スピルバーグの『激突!』のヒットにあやかったのかな?)
その主人公チャーリーにウォルター・マッソー。どうしても『おかしな二人』のイメージが強いので、銀行強盗役は似合わないと思っていたが、金をまんまと奪った後、その金がマフィアの資金であったことから、大金を手に入れ、はしゃぐ仲間の若者を諌めながら、何とか追っ手から逃れようというストーリ−の中では、マッソーの渋い演技が光った。
とにかく逃げ手と追っ手の行動だけにフォーカスし、余計なものは一切削ぎ落とした筋立が、まさにハードボイルド映画の骨法であろう。何故、主人公が銀行強盗しなければならなかったのかとか、妻や仲間の関係はどういうものだったのかとか、マフィアの内部抗争はどうなのかとか、そういうことは、最低限のことさえ知っていれば良いのだ!いや、たとえ何もわからずとも、このチェイスだけで十分だろう!というスタンスが潔い。これが映画だなあ、と思わず唸ってしまうのであった。
マフィアに雇われた殺し屋ジョー・ドン・ベイカーが魅力的。こういう映画では、やはり悪役の方が光るものである。マフィアの黒幕、ジョン・ヴァーノンも然り。
ドン・シーゲルは、相変わらず尋問シーンが容赦ない。
ウォルター・マッソーが、マフィアの秘書の女性宅に入り込んだ時、「窓から投げ捨てることはしない」と、『殺人者たち』の名シーンを持ち出していたのがおかしかった。(この後、敵対する二人が簡単に一夜を過ごすのも、ハードボイルド!)
ラストの複葉機と車のバトルは、明らかに『北北西に進路を取れ』を意識しているが、その結末も含め、実にスリリングな名場面であった。ジョー・ドン・ベイカーが吹っ飛ばされた時は、思わず拍手。その後、ウォルター・マッソーの逃走車のエンジンが、なかなかかからないのも、ハラハラさせられた。
さて、あと一本だ。

突破口! [DVD]

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ドン・シーゲル コレクションDVD-BOX

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