国立劇場・文楽 鑑賞教室と「千本桜」

kenboutei2006-12-17

鑑賞教室は、『火の見櫓』と『重の井』。「火の見櫓」は、もう何度もこの鑑賞教室で観ているような気がする。「重の井」は、ほぼ寝ていた。津駒大夫の高音が、心地良い子守唄となってしまった。調姫を遣った玉若が、まだ姿勢もままらなかった。
解説の相子大夫、龍聿がなかなか面白かった。最近のお笑いを意識しすぎだが。
本公演は、『義経千本桜』の半通し。
平成15年9月の東京公演で一度通しを観ているが、もうあまり覚えていない。そのせいか、随分新鮮に感じた。
昨年、大河ドラマの『義経』で、ようやく源平の対立構図や、天皇との関係が理解できたせいか、特に初段の「堀川御所」が面白かった。義経に対し、頼朝の三ヶ条の不審を質す川越、実父を庇って自害する卿の君など、史実とは違うのだろうが、その関係やエピソードをうまく使った物語の楽しさを、ひいては当時の江戸の人々が面白がった人形浄瑠璃の楽しさを、自分も感じることができた。冒頭の静御前の舞いや、義経の不興を買った弁慶に対する執り成しを願う場面は、前回の時は省略されていたことを、帰宅後、当時の筋書付録の床本を比較して知った。(新鮮に感じたのも、一部道理であった。)弁慶のことを、義経も亀井も駿河も、「坊主、坊主」と問題児のように扱っているのが、『勧進帳』の立派な弁慶とあまりにも落差があり、おかしかった。
この段の床では、呂勢大夫・燕三が安定。後の芳穂大夫は、若々しく大声を張り上げていた。素直な声量。
次の段の「渡海屋、大物浦」もなかなか良かった。特に後半、典侍局と安徳天皇が入水しようとする場面、白い布を敷き、辞世の句を書くその段取りが、いちいち悲しい。(もっとも上手に拵えた海のセットは、池にしか見えなかったが。)典侍局を遣った和生が良い。
知盛は玉女。前に観た時は、玉男だったんだよなあ。碇を担いでの入水、思ったよりゆっくりと落ちていった。
床では中の咲甫大夫、知盛の能掛かりのところがうまかった。声に幅が出てきたように思う。声量で押し通そうとするところは、師匠咲大夫譲りだが、個人的にはあまり似てほしくない。
千歳大夫、清介は、安心して聞ける。
十二月は毎年若手中心の公演だが、それにしても、名前をいちいち確認しなければわからない程の若手が、どんどん出演するようになったものだ。(なかなか覚えられないというのもあるが。)