三月国立劇場 福助の『女清玄』

kenboutei2013-03-24

南北の隅田川花御所染。通称『女清玄』は、昔から観たいと思っていたのだが機会に巡り会えず、今日が初見。実際、二十五年振りとのこと。南北が清玄ものを書いたのは、実は『桜姫東文章』よりもこの『女清玄』の方が先だったというのも、興味を増す。
筋書の簡略化されたストーリーを追っただけでも、かなり面白そうなのだが、実際の舞台の印象は極めて薄い。ところどころ、眠気にも襲われた。
とにかく無人の座組、客の入りも悪く、芝居を観る環境としては何とも物足りない。福助の清玄尼は当然としても、隼人の松若丸、児太郎の桜姫、松也の猿島惣太という配役は、一体どういうことなのか。座組としては、錦之助翫雀もいるのだが、この二人は脇に回ってしまっている。これで南北の芝居を見せようというのは、国立劇場も客をなめているとしか思えない。埋もれた作品を復活させるのなら、しかもそれが南北のような当時の役者にあてて書いている作家の作品であるならばなおのこと、役者の持ち味を考えて配役を考えるのが、まずは企画者の務めであろう。若手の修行の場にしたいのなら、それに相応しい演し物は他にいくらでもある。
今月は新橋にしろルテアトルにしろ、若手中心でまるで夏芝居みたいなのだが(幹部は来月の歌舞伎座新開場に備えているのだろう)、それにしてもである。
隼人の松若丸は、色悪を意識してはいるようだが、身体も台詞もそれにほど遠い。児太郎の桜姫は、赤姫としての華やかさに乏しい。松也の猿島惣太は、化粧のせいかコソ泥にしか見えない。
期待の福助の清玄尼も、この座組では本来の魅力も発揮しようがない。かろうじて序幕花見の場、花子から清玄尼になった後の花道七三で、剃髪した頭を見せる場面が美しかったのが印象に残った程度。
ちゃんとした座組で、できれば新しい歌舞伎座で観てみたいが、叶わぬ夢だろうか。