新橋演舞場8月花形歌舞伎 第三部

kenboutei2011-08-14

『宿の月』扇雀橋之助。夫婦の情愛を描いた田中青滋の舞踊劇とのことだが、観ていて何の面白さも感じなかった。多少『身替座禅』的喜劇要素が入っているが、中途半端。背景画の松葉目も、幹が描かれない松の木で、これも中途半端。
怪談乳房榎筋書の上演記録を観ると、2年前のさよなら歌舞伎座公演でやっている。当然観ているのだが、芝居が始まっても、全然記憶が甦ってこない。まるで初見のような感覚。これはおそらく、2年前は熟睡していたのだろうと、帰宅後に過去の感想を辿ると、ちゃんと最後まで起きて観ていたようだ。うーん。
結局、早替わりが眼目の芝居という印象は、今回も同じ。
菱川派の絵師の師匠に新たに弟子入りした浪人が、師匠の妻を寝取っただけでなく、師匠とその子も、菱川家の下男に殺させる。これに浪人と顔馴染みの流れ者が絡み、最後は滝の中での立ち回り、師匠の亡霊に浪人が取り憑かれ、「恐ろしき執念じゃな」で幕。(←たぶん、またすぐ忘れるだろうから、とりあえず書き残す。)
師匠と下男と流れ者に円朝の4役が勘太郎。浪人に獅童、師匠の妻は七之助
勘太郎の4役では、流れ者のうわばみ三次が良かった。下男正助は平凡、師匠の菱川重信は、まだ貫禄が足りない。
獅童の浪人・磯貝浪江は、本性を表していない最初の出から、悪そうな感じがする。ニンとしては合っているのだろうが、役の掘り下げは不十分。(それほど深みのある役でもないが。)
まあ、目に楽しい芝居、花形・納涼歌舞伎としては、良かったのではないかな。