『沈丁花』

kenboutei2010-02-15

神保町シアターの、オールスター映画特集。『沈丁花』。昭和41年の東宝映画。千葉泰樹監督。
四人姉妹のうち、婚期の遅れた長女と次女の、結婚騒動。
長女は京マチ子、次女は司葉子。既に結婚して赤ん坊もいる三女が団令子、ちょうど結婚したばかりの四女が星由里子。他に弟の田辺靖雄がいる。
何とか長女と次女を嫁に行かそうと思い悩んでいる母親が杉村春子。(たまたま観た大映東宝のオールスター映画の両方に出ている杉村春子。花形歌舞伎の上置きみたいな存在だ。)
二人の相手として浮上してくるのは、宝田明仲代達矢小林桂樹ら。他に京マチ子のお見合い相手として、小泉博、高島忠夫三木のり平は、業界誌に掲載された「嫁募集」の広告(「子供一人までは可」などと具体的。)を見て訪ねてくる。(そして追い返される。)
東宝らしい明るい展開で、肩の力を抜いて楽しめた。
京マチ子は歯科医で、死んだ父の後を継いで、開業しているという設定。叔父役の加東大介が仕掛けた花婿候補の宝田明にまんざらでもないが、宝田明は妹で歯科助手司葉子をデートに誘う。司葉子もその気になるが、実は宝田明は、自分の弟の佐藤允の嫁として考えているのであった。
この勘違いシチュエーションだけで、結構話は持つはずなのだが、杉村春子を間に挟んで、あっさりそのカラクリがバレてしまって、次の花婿探しになる潔さも、東宝的である。
司葉子は、ちょっと化粧が濃かったが、酒を飲んで酔っぱらったり、茶の間でくつろぐ姿が庶民的で楽しい。診療所内での客あしらいもチャーミングで、いつものクール・ビューティーとは違う、どちらかというとコメディエンヌの魅力があった。
原作・脚色に松山善三。衣装考証で高峰秀子がクレジット。(どうせなら出演もしてほしかったなあ。)