『花つみ日記』

kenboutei2009-12-27

神保町シアター昭和14年石田民三監督。
大阪の女学校を舞台に、置屋の娘の高峰秀子と、東京から転校してきた清水美佐子との友情を描く。
高峰秀子15歳。『綴方教室』の翌年の作品だが、すっかり大人びた感じ。セーラー服姿がまぶしい。(『綴方教室』のボロボロの着物姿とは好対照。)
転校生と仲良くなり、憧れの先生へ二人だけの秘密の誕生プレゼントを送ろうとするが、ささいな誤解から絶交してしまい、高峰秀子は学校を辞め芸妓となり、清水美佐子の方は、自責の念から泣いてばかり。
清水美佐子の兄の出征を知り、高峰秀子は千人針を作ろうと、風邪をおして街頭に立つ。先生の葦原邦子が仲介となり、二人の友情が甦って、めでたく「をはり」。(この字のエンディングは、『まごころ』に次いで2作目。『まごころ』も同じ昭和14年東宝作品。)
まるで少女漫画のような、女の子の世界。戦時中とは思えないメルヘンチックさ。上流階級の贅沢でゆったりとした時間が流れる。(宝塚の世界はこんな感じなのかな。)
女生徒みんなが憧れる梶山先生(名前は芙蓉という。)の葦原邦子は、クレジットでは特別出演となっている。ピアノをひいて独唱するのを少女たちがうっとり聴き入るという場面から、宝塚の「男装の麗人」(byウィキペディア)は、当時相当のスターであったことがわかる。
少女たちが、葦原邦子のことを、中原淳一描く女性に似ていると噂するのだが、葦原と中原は夫婦だったらしく(これもウィキペディアで知る)、楽屋落ちのネタだったのだろうか。
高峰秀子の相方となる清水美佐子は、ほっそりとした美形。乙女チックな世界にはぴったりのイメージ。
高峰秀子はセーラー服も、家での和服姿も、また、芸妓になっての舞子姿もそれぞれに可愛いが、風邪で寝込んだ時のパジャマ姿で、長く豊かな髪をとかずにそのままおろしているのが、ちょっと大人びていて、一番魅力的であった。
フィルムはニュープリントで、白黒のコントラストが美しい。戦前の大阪の街並みがわかる貴重な風俗映画でもある。
それにしても、この神保町シアターでよく観るようになった、昭和15年くらいまでの日本映画は、自分が思っていた以上に多彩な世界が描かれており、決して戦争一辺倒というわけではない。映画技術そのものも、非常に高度だと感じる。(少なくとも先日観た最新3D映画より遥かに質が高い。)