11月新橋演舞場・花形歌舞伎 昼の部

kenboutei2009-11-08

『盟三五大切』染五郎の源五兵衛、菊之助の三五郎、亀治郎の小万。
これまで観てきた『三五大切』に比べると、どうにも非力な配役であるのは仕方がないが、まあ、そんなに退屈せずに観ることはできた。染五郎は、思っていたよりサマになっていた。二役の大家も結構良かった。亀治郎の小万は平凡。もっと古典味があると期待していたのだが、案外新劇っぽくて肩透かしであった。
菊之助の三五郎は、いくら父親が演じているからといって、今は無理な役だろう。凄んでみせても誠実そうに見えてしまい、悪党の迫力がない。
今月の座組であれば、松緑の三五郎、菊之助の小万で観たかった。(どこか今月の新橋は、演目と役の組み合わせが、いすかの嘴である。)
松也の虎蔵が好演。だんだんと父親と同じ役回りが似合うようになってきたのに感慨あり。
寿鴻のますます坊主が貴重。
『弥生の花浅草祭』愛之助松緑による四変化舞踊だが、メインは『三社祭』と『石橋』。
最近、松緑の踊りを面白く観られるようになってきたのだが、今日の松緑は一段と良かった。隣で踊る愛之助と比べると、それは更によくわかる。
三社祭』では、手足の動きを丁寧にしようとして、かえってぎこちなく見える愛之助に対し、全体的な流れを重視し、その身体の自然な流れによって、動きが大きく見える松緑。違いが歴然であった。
『石橋』の毛振りになると、その差は一層広がる。松緑の毛振りの、何と見事なことか。数えきれない程振り回して観客の喝采を浴びていたが、そんなことより、毛振りの円運動の美しさに目を見張る。毛の先端までコントロールできている回転のさせ方は、勘三郎でさえ自分は観た記憶がない。
そしてあれだけの回転、あれだけのスピードで回していたにもかかわらず、振り終わっても全く息が上がっていない。途中から明らかに松緑の回転に遅れをとり、隣でハアハアしている愛之助が気の毒になるくらいであった。
ただ、松緑の欠点は、その童顔である。悪玉の面を被る『三社祭』や隈取りのある『石橋』ではあまり影響しないが、老人の武内宿禰になった時、真っ白に塗った顔は、ほとんど赤ん坊のようであった。幅広い役を演じる歌舞伎役者として、この童顔は、かなりマイナスであると思う。
それはともかく、今日は松緑の踊りにかける気迫のようなものを感じ、一刻も早く、彼の『鏡獅子』を観てみたい気持ちになって、演舞場を後にしたのであった。