『細雪』

今日はシネマート六本木の新東宝特集の方へ。阿部豊監督の『細雪』。
谷崎の『細雪』は、これまで3度映画化されており、この1950年の新東宝版が一番最初。先日テレビで観た市川昆のが3度目で、他に1959年に作られた島耕二の大映版があり、こちらは未見。
東宝版は、2時間20分以上の長編だが、話の筋を追うのに精一杯で、原作の持つ絢爛な雰囲気や風情が足りない。その点は、ストーリーは犠牲にしても映像美で魅せた市川バージョンの方が優れている。
鶴子に花井蘭子、幸子は轟夕起子、雪子が山根寿子、そして妙子に高峰秀子
この配役だと、雪子より妙子に比重があったのも、当然かもしれない。
高峰秀子は、ほとんど洋装だったが、上方舞を披露する時のみ和服となり、これが実に美しかった。特に、日本髪に結った時の、頭と身体のバランスが見事。この舞いの場面が、個人的には一番良かった。
他の姉妹では、幸子役の轟夕起子がおっとり、はんなりした雰囲気があった。
田中春男が奥畑の啓ぼん。金持ちの放蕩息子をさせると、まさに嵌り役。
田崎潤が写真家の板倉。突然の発病で、ベットで「痛い!」と叫ぶのだが、この叫び声が、往年のNHK「連想ゲーム」の、ワンワン・コーナー(だったかな?)での絶叫と同じだったので、ちょっとおかしかった。
伊志井寛が鶴子の夫役だが、あまり仕どころがない。
板倉の妹役で香川京子が出演していたのが、嬉しい。
洪水の場面は結構リアルな特撮であった。(後の『忍術児雷也』のスタッフとは違うのだろうか?)
映画の日で、一律1,000円だったが、それでも観客は20人程度。やはり新東宝の特集は、マイナー過ぎるのかな。

細雪 デジタル・ニューマスター [DVD]

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帰りに、東京ミッドタウンなる場所へ、初めて立ち寄る。虎屋の喫茶店がくつろげた。