『妻として女として』

kenboutei2009-01-25

神保町。
成瀬巳喜男昭和36年作。
大学教授の妻と妾の対決。妻は淡島千景、妾は高峰秀子、大学教授に森雅之
森雅之は、相変わらず優柔不断な男を演じている。
「今のままでいいじゃないか」と、日陰の立場を清算しようとする高峰秀子に何度も繰り返す森雅之。男の身勝手な台詞だが、その心情はとてもよくわかる。何だか他人事じゃないよなあ。(別に妾がいるわけではないけど。)
料亭を持たせてもらって優雅な妾役の淡路恵子や、妾から正妻になって安泰の関千恵子など、高峰秀子を含め「妾仲間」が「パパさん」役の十朱久雄と旅行に行く場面が面白い。
先日観た『あらくれ』も、高峰秀子が「自分は妾になんかは絶対ならない」と自立する話で、妾の三浦光子を殴ったり蹴ったりしていたが、たまたまこの2本だけ観たなら、当時の日本はお妾さんが制度として広く確立されていたのだと勘違いしそうだ。
高峰秀子の方は、森雅之(と淡島千景)が経営する、銀座の小さなバーの雇われママ。銀座のホステスの生態を見る映画としても面白かった。
時々挿入される回想シーンへの繋ぎ込みが実に自然でうまい。
飯田蝶子高峰秀子の母親役。元芸者という設定で、娘が妾でいることを、極めて現実的に受け入れているところが興味深かった。入れ歯を外すと可愛いおばあちゃんだが、回想シーンで入れ歯を入れて若作りすると、かつての小津映画での面影が甦る。
高峰秀子の実子だが、正妻側で育てられる長女に星由里子。
カラー映画だが、色褪せが進行し、フィルム傷やノイズも多い。(観ているうちにそんなことは忘れるが。)