正月国立劇場 團十郎復帰の『象引』

kenboutei2009-01-24

初春の歌舞伎観劇、締めは国立劇場
『象引』半年振りの團十郎。前に白血病の闘病生活から復帰した時は、歌舞伎座での『外郎売』。そして今回は『象引』。以前にも書いたが、成田屋の復帰には、歌舞伎十八番がやはり相応しい。
赤っ面の團十郎が花道七三のツラネで、「半年振りのお目見えに」と言うところなどは、観ているこちらも、ああ本当に復帰したんだなあと、しみじみ嬉しく思う。その他にも、巳之助が三津五郎に「お父っつぁん、成田屋のおじさんに花を持たせたら」と言った後、客席に向かってお辞儀をする。役の立場を超えて役者自身が客席と直に交流するのは、江戸時代から脈々と続く歌舞伎の伝統でもあり、そういうことを最も活かせるのが歌舞伎十八番のような形式であると思う。
今回の『象引』は、松緑以来の復活モノ。そういう意味では、演舞場の海老蔵『七つ面』と同じなのだが、『暫』をベースとした構成は、團十郎復帰というもう一つのテーマとうまく嵌って、程よい一幕となっていた。
團十郎の箕田源二猛は、赤い腹出しに鮮やかな黄緑を配した素襖が見事で、赤っ面にパーマをかけたような車鬘が面白い。「待ぁーてぇー」と声も甲高く、威勢良くドカドカと花道を出てくるその風貌、まさに清倍描く初代團十郎の丹絵を見るごとしであった。

公家悪の三津五郎と二人で象を引く場面は、象を支えて左右に動かす裃後見が邪魔に思えた。また、福助の弥生姫が出家することで、象が大人しくなるという筋立てにはちょっと違和感を覚えたが、理屈抜きに楽しむ狂言に、そんなことは言うだけ野暮だな。
亀三郎、亀寿、市蔵による化粧声が、三人だけなのに力強く揃っていて良かった。
途中で舞台から投げ入れられる手拭いを、幸運にもゲット。
もう一度、今の歌舞伎座でやってほしいなあ。
『十返りの松』天皇陛下御即位二十年記念」と角書がつき、芝翫以下成駒屋三世代が、人間国宝・山勢松韻の箏曲で舞うという、大変目出たく有り難い舞踊を、ほぼ熟睡。罰当たりでしょうか・・・。
『裊競艶仲町南北の復活狂言。久しぶりに国立劇場の本来の仕事をみたような感じ。南北にしては、台詞の面白さや複雑な人間関係などは薄味であったが、その分、すっきりしていてわかりやすかった。(そのように復活側が構成したのかもしれないが。)
三津五郎の南方与兵衛、橋之助の与五郎、市蔵の番頭、團蔵の平岡郷左衛門が、それぞれ過不足なく演じている。
福助は、遊女都と娘お早の二役だったが、役の違いをはっきりさせようとしたのか、お早が極端に子供っぽすぎて興醒め。原作もそういう指定だったのかもしれないが、あえて二役にしない方が良かったようにも思えた。
芝喜松、芝のぶが奮闘。