『婦系図(総集編)』

神保町シアター。『婦系図(総集編)』。受付で年配の男性が、大きな声で「ふけいず、一枚!」と言っていた。
今回の一連の神保町通いは、山田五十鈴特集のためであったが、自分としては、この機会に、『鶴八鶴次郎』『歌行燈』、そしてこの『婦系図』と、新派ゆかりの作品に触れることができたのが、大きな収穫。何しろ、どれも舞台では観ていないしね。
今日の『婦系図』は、昭和17年マキノ正博監督での東宝映画。長谷川一夫の主税、山田五十鈴のお蔦、古川緑波の酒井、高峰秀子の妙子、三益愛子の小芳。
ロッパの酒井俊蔵が、とてつもなく嫌なやつで、どうにも苛つく。これは原作の持つキャラクターの部分もあるだろうが、ロッパ自身の持つ独特の嫌らしさが、自分には鼻について駄目だった。
高峰秀子が相変わらず可愛い。今のアイドルにも負けない清楚な美しさ。
三益愛子は、この時点で既に悲劇の母親キャラが確立している。
字も読めないので、主税の大事な原稿もゴミと思って燃やしてしまう、お蔦。学はないけれど、けなげで一生懸命なところが同情を誘うのだが、こういう女性像は、今のおバカキャラにも繋がっているのだろうか。自分としては、お蔦より妙子の方が、よっぽど良いけれど。(デコちゃんが演じているせいもあるが。それに、山田五十鈴に、お蔦のキャラは合わないと思った。)
山田五十鈴が、主税が旅立つ駅に向かって駆け出すショットを、細切れのカットバックを多様しているのが印象的。
今日は高齢女性客が多かった。