『蛇姫様(総集編)』

kenboutei2008-12-22

神保町シアターで、『蛇姫様(総集編)』。衣笠貞之助監督、昭和15年東宝
悪家老のバカ息子を斬って逃げる商人の長谷川一夫長谷川一夫を匿う旅芝居一座の山田五十鈴。この二人の黄金コンビの話かと思うとそれだけでなく、悪家老が山奥に作った陶器製造基地の秘密を探ろうとする大河内伝次郎の活躍が絡む、予想以上にスケールの大きな、冒険活劇であった。スピルバーグやルーカスが、インディ・シリーズで再現しようとしていた冒険活劇映画は、たぶん、この種の映画(の西洋版)だったのだろう。そう考えると、スピルバーグで『蛇姫様』をリメイクしてくれたら面白いだろうな。
大河内伝次郎の存在感が圧倒的。ぐっと相手を睨む顔つきだけで、絵になるから凄い。竹薮での殺陣も素晴らしい。邪魔な竹をスパッ、スパッと切り落としていきながら、敵に詰め寄る迫力の素晴らしさ。相手の懐に飛び込むように剣を斬りつける、剣道スタイルの剣捌きは、かつて観た山中貞雄の『百万両の壷』の時と、同じであった。
旅一座に逃げ込んだ長谷川一夫(ちょうど、忠臣蔵の五段目を出している時だった。)は、そこで若女形となり、踊りを見せてくれる。やはり今の藤十郎に似ているが、松井誠の女形にも似ている。踊り自体は、まあ、サービス程度といったところか。
一座の座長・市川十蔵役に高堂国典。いつもイメージのある老人役ではなく、侠客風の男っぽさが意外で、観ている間は気がつかなかった。
入江たか子が、城のお姫様。タイトルとなった、蛇姫様とは彼女のことらしいが、なぜそんな名になったのかは、このダイジェスト版(それでも2時間だが)では、よくわからなかった。
山田五十鈴は、戦前の方が美しいということを、改めて確認。