『人生とんぼ返り』

kenboutei2008-12-15

今日も神保町シアターマキノ雅弘監督の、『人生とんぼ返り』。
新国劇の殺陣師、市川段平の話。以前観た、鴈治郎の『殺陣師段平』のリメイク、と思ったら、こっちの方が早い、昭和30年の日活映画。(と思ったら、それより5年前に、同じマキノ監督が東映で作った作品があるらしい。だから『人生とんぼ返り』は、東映版のリメイクということだろう。)
森繁久彌が段平役だが、前に観た先代鴈治郎のイメージが強いので、軽過ぎて物足りない。(鴈治郎のような、飄々とした軽さとは違う。)
妻役の山田五十鈴は、あまり仕どころがない。
左幸子の娘おきくが儲け役。左幸子は、実にけなげ、おでこが可愛らしい。ちょっとつり上がり気味の猫のような目も、それほどきつく感じず、昔観たTBSドラマの「赤いシリーズ」での、意地悪なおばさんというイメージとは全然違っていて、驚いた。(でも、こんなチャーミングな女の子が、あんな風になるんだよなあ。)
中風になった寝ている段平に、親子関係を怖々尋ねる左幸子の、簾を前に顔を出したり隠したりする場面が、とても印象的。
沢田正二郎に、中風の忠治の殺陣をつけるのは、段平自身ではなく、段平からそれを授けられた、おきく。幕が開く直前のことで、沢田が客に「もう少し待ってくれ」と頼むのは、もろ『男の花道』である。
河津清三郎沢田正二郎国定忠次の顔になった時が、格好良かった。

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↑日活版(昭和30年)大映版(昭和37年)
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東映版(昭和25年)