『鶴八鶴次郎』

kenboutei2008-12-10

神保町シアター山田五十鈴特集。
新派でもお馴染み(といっても観たことないが)の、川口松太郎の『鶴八鶴次郎』。監督成瀬巳喜男山田五十鈴長谷川一夫の黄金コンビの最初の作品とのこと。昭和13年作。
新内語りの鶴八(山田)と鶴次郎(長谷川)は、若いながらも人気コンビで、ベテラン揃いの名人会にも抜擢される活躍。しかし芸のことでの喧嘩も絶えず、結局喧嘩別れ。鶴八はパトロンと結婚し、不自由ない生活を送るが、鶴次郎の方はどんどん落ちぶれ、芸も荒れる。
周囲の支援で、再びコンビが復活、鶴次郎も甦るが、せっかく幸せを掴んだ鶴八に、芸の道に戻させたくなかった鶴次郎がわざと喧嘩をふっかけ、結局別れてしまう。
芸の道としては、そんなオチで良いのかと思ってしまうのだが、喧嘩別れした後に、鶴次郎が番頭と酒を酌み交わしながら、その心情を吐露するところが、何とも味わいがあって、観ている方をも酔わせる。
楽屋内で、さっきまでの舞台を振り返って、言い合う二人が、とても愛おしかった。
凛とした三味線姿の山田五十鈴が美しい。
長谷川一夫は、松竹から移籍し、顔を切られた直後のせいか、頬の傷跡が思いのほか目立っていた。
鶴次郎の番頭役、藤原釜足が傑作。決して熱演しない名演技。
改めて、新派の舞台も観てみたい。(確か渡辺保の「昭和演劇大全集」を録画していたような気がするが。)