『怪獣大戦争』

kenboutei2008-06-27

シリーズ第6作。
土屋嘉男、水野久美演じるX星人が登場し、ゴジララドンが操られてキングギドラと戦い、ゴジラがシェーをする、といったことは知っていたが、きちんと観るのは初めてだったかもしれない。(もしかしたら、1971年の東宝チャンピオンまつりで観たかもしれないが、何せ7、8歳のことだ。)
意外に硬派な作りとなっていることに驚いた。
ゴジラ映画というよりも、侵略テーマのSF映画である。
関沢新一の脚本が快調で、本多監督のテンポの良い演出と相俟って、観ていて気持ち良い。(カット前後の繋がりのうまさは、プログラム・ピクチャーのお手本のようでもあった。)
X星の基地内の、光による回廊の描写は、一見すると『2001年宇宙の旅』にも負けない程の映像美であった。
また、X星人の円盤の、左右上下のシンメトリーも美しい。この円盤が湖から出現するところは、やはり東宝特撮史に残る名場面である。(そして、その後に登場するゴジラは、シリーズ史上、最も情けない出現シーン。)
土屋嘉男の「宇宙演技」も楽しい。
水野久美とニック・アダムスとのキス・シーンがあり(といっても事後のショットからだが)、この映画が決して子供向けだけを意図して作られたものではないことがわかる。(もともとアメリカのベネディクト・プロとの合作ということもあるのだろう。)
後にカルト化される土屋嘉男や水野久美の宇宙人が強烈なので、「人間側」の宝田明や沢井桂子、久保明の印象は薄い。ただ、おなじみの東宝俳優陣が、色々な役で出演しているのが、安心感を与えてくれて心地良かった。個人的には、土屋嘉男X星人統制官の部下(移動指令)の、田島義文が、宇宙人という設定をあえて無視しているような、野暮なヤクザの親分キャラで押し通していたのが、非常に好きだ。
あくまでX星人との攻防がメインで、怪獣バトルは添え物的である中では、ゴジラもシェーくらいしなければ目立たなかったかもしれない。このシェーは、シリーズ低俗化の象徴のようにも言われているが、話の流れの中ではそれほどの違和感もなかった。(DVDのオーディオ・コメンタリーは土屋嘉男で、ゴジラにシェーをさせたらどうかと進言したのは、自分だったと告白していた。)
過去のフィルムの使い回しなどが見られ、そろそろ製作条件が厳しくなってきたことも、伺える。
冒頭の、伊福部昭のマーチが気分を高揚させ、ラストの土屋嘉男の自爆時の台詞など、カルト映画になり得る要素が沢山の、怪作。

怪獣大戦争 [DVD]

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