中野翠『小津ごのみ』

読了。

小津ごのみ

小津ごのみ

著者も自分で書いているが、従来の男性から観た小津映画への評価とは異なる、女性ならではの視点で小津を論じている点が、ユニークで面白かった。
映画の登場人物の着物や帯にデザインされている格子や縞の模様に着目したり、特徴的な湯呑み茶碗や電気スタンドが他の作品にも使われていることなどを指摘し、小津安二郎の洗練された美的センスとこだわりを、「小津ごのみ」として徹底的に追求している。結構自分でも気がつかなかった指摘もあり、今度小津映画を観る時は、是非確かめてみようと思った。
とても共感したのは、著者の小津映画へのスタンスが、

戦後の「小津調」ホームドラマを家族愛の物語としてではなく「無常」の物語として見ているところ(P262)

であると言っている点である。これは自分も全く同じである。似たようなことは、自分も『東京物語』を観た時に思ったものである。
その点について考察している、『なぜホームドラマなのか』という一章が、膝を打つ思いの内容であった。
・・・次のDVD鑑賞は、小津作品にしよう。