二月歌舞伎座・昼の部

kenboutei2008-02-03

雪の中、歌舞伎座へ。(すぐに地下に潜ったので、それほど雪を堪能できなかったが。)
今月は、白鸚27回忌追善。
小野道風青柳硯』筋書の解説によると、作者は二代目出雲、半二、松洛らのビッグネーム。残っているのは、今回の「柳ヶ池蛙飛の場」だけのようだが、小野道風が柳に飛びつく蛙を見て悟りを開くという逸話が、この狂言で広く知られるようになったということは、当時よほど人気があったのだろう。この場だけでなく、一度通しで復活できないものだろうか。(それこそ、国立劇場の仕事だろうが。)
小野道風梅玉、独鈷の駄六に三津五郎三津五郎が蛙のように飛び跳ねる姿が面白い。
『車引』橋之助の松王。松緑の梅王。錦之助の桜丸。
松緑の梅王丸の、顔の隈取りが良かった。身体とのバランスでいくと小さめの頭なのだが、輪郭が丸いので、隈取りが顔全体に広く描けて、良く映えていた。写真で見る祖父の梅王丸の隈取顔に、よく似てきた。台詞はまだ幼さを感じるし、時々棒立ちになるが、この顔だけ見ていても気持ちよかったし、赤地に梅の襦袢も似合っていた。
錦之助の桜丸は、ニンに合っているように思っていたのだが、全体的に硬く、平凡。柔らかみを出そうとして、コワゴワと身体を動かしている。もっと数をこなせば、よくなるかもしれないが。
橋之助の松王は、顔が延若に似ていたが、意外と大きさがない。荒事の約束として意識的に立てている足の親指だけが、異常に目立っていた。横顔なんかは絵になるのに、何かが足りない気がする。
歌六の初役、時平が非常に良く、舞台を締めた。鐘の音に合わせて、袖を巻き上げ口を開けて睨む姿が怪異で、これは歌六の持ち役として続けてほしい。
『関の扉』昼の部では一番面白かった。
福助の小町姫、最初の花道七三での所作が極めて美しく、うっとりと眺めていた。後半の墨染も、水墨画のような清らかな品があって、この後、歌右衛門襲名があるなら、披露演目として出してもおかしくない立派さであった。
吉右衛門の関兵衛も、前回以上に良かった。特に前半の関兵衛は、踊りで見せるのではなく、飄逸な仕種が面白かった。「きやぼうすどん」もきっかりとした当て振り。後半の黒主は、それこそ国崩しの大きさがあり、申し分なし。
染五郎の宗貞は、この二人と比較するのは、ちょっと気の毒。
常磐津の一巴太夫、前半はあまり声が出ておらず心配したが、後半は少し持ち直した。
『七段目』かなり強い睡魔に襲われ、あまり印象に残っていない。幸四郎の由良助、芝雀のお軽、染五郎の平右衛門。まあ、ずっと起きていても、同じような気もしたが。錦吾の九太夫が、新鮮でちょっと面白いと思った程度。芝雀のお軽を歌舞伎座で観られるとは思っていなかったので、楽しみではあったのだが。
 
帰りは、再びすぐ地下に潜り、アキバに寄ってから帰宅。雪は、雨に変わっていた。