浅草歌舞伎 一部・二部

kenboutei2008-01-13

通しで観る。(それでも午後7時前には終わる。)
第一部
『吃又』亀治郎のおとくがうまい。これが初役とは思えない達者さ。歌舞伎座の大舞台でも十分通じる。勘太郎の又平は健闘。吃りの技術はまだ未熟だが、誠実さは伝わる。手水鉢の前での見得で、段階的に身体を傾けるのは、誰の教えなのだろう。男女蔵の将監は、全く気が入っていない。巳之助の修理之助はまだまだ。
『弁天娘』七之助の弁天小僧菊之助。初役の平成中村座も観ているが、あまり記憶に残っていない。(実は帰宅するまで、観たことすら忘れていたが、過去の日記は残っていた。随分ひどい事書いてたなあ。) 今日も、「浜松屋」は凡庸であった。亀鶴の鳶頭が、意外の上出来。獅童の南郷、愛之助の日本駄右衛門。
巳之助の宗之助が、良家のボンボン風で良かったのだが、それはどうも本人が持つおっとりさかがそのまま出ていただけのようだ。(こういう役だけ良くても、それはそれで問題である。)
「浜松屋」より、「勢揃い」の方が、断然面白い。亀治郎の忠信、勘太郎の赤星が加わり、五人男のバランスも良く、花形芝居ならではの華やかさがあった。七之助の弁天も、この場の方が、すっきりとしている中に力感もあり、優れている。
第二部
金閣寺亀治郎の雪姫。これも立派。やはり器用な役者だなあ。この座組の中でも、一人だけ抜きん出ている。最初の方、上手の屋体で戸口に身体を預けるところの形が、丁寧で良かった。一方で、爪先鼠の場面は、少し粗雑であったが。それにしても、武田信玄の後に、三姫を演じるのだから、歌舞伎役者というのは凄いものだ。
獅童の大膳も、非常に良かった。顔の立派さに加え、台詞廻しも堂々としており、感心した。勘太郎の東吉は、少し硬い。
亀鶴の慶寿院は、いくらなんでも・・・という配役。第一部の男女蔵の将監を観ても思ったのだが、しっかりしたベテランの上置きは、必要なのではないか。どうしても若手では無理な役というのはある。それをあえてこの座組だけでカバーしようとすると、芝居全体が軽く見られてしまうと思う。
『切られ与三』七之助のお富、愛之助の与三郎。観る前は、とても芝居にならないのでは、とも思っていたが、案外に面白かった。玉三郎仁左衛門コンビのミニチュア風ではあったが、今はそれでも良いと思う。特に七之助のお富は、仇っぽさの片鱗は垣間見られるので、今後もトライしていくべきだろう。弁天小僧よりこっちの方がニンではないだろうか。
亀鶴の蝙蝠安は、ただ役をなぞっているだけ、全く歯が立たなかった。男女蔵の多左衛門は、筋書のインタビューでも言っているように、お富の兄の面を意識し、決して妾を囲っているのではない、ということを強調していたが、そういう多左衛門像は、あって良い。
小山三が元気で何より、ということはついこの前も記したような気がするが、他に、千弥が茶屋の女で健在であったのも、特に嬉しかった。
 
一部・二部ともに、冒頭に出演者の一人が年始の挨拶。今日は、一部は獅童、二部は愛之助。観客とのやりとり等、浅草ならではのアットホームな雰囲気はとても好ましいが、一部二部共に、拍手の練習をさせるのは、役者がテレビの前説をしているような感じで、ちょっとどうかと思った。
帰りは、浅草で寿司。