『ガス人間第一号』

kenboutei2007-07-28

京橋フィルムセンター、「逝ける映画人を偲んで」特集で、『ガス人間第一号』を観る。偲ぶ対象は、三橋達也松村達雄、音楽の宮内国郎、特撮の有島貞昌など。(追悼上映で選ぶ映画は、亡くなった映画人ができるだけ多くクレジットされているものを選んでいるのか、必ずしも本人の代表作ではないものも多い。まあその分、普段あまり観る機会のない埋もれた作品を観られるのだが。)
東宝特撮映画は、怪獣物は割合観ているが、この辺のSF怪奇・犯罪物はあまり観ていない。
本多監督、円谷特技監督のコンビは、怪獣物同様、本編と特撮部分をうまく融合させ、完成度の高い作品に仕上げている。
ガス人間となる土屋嘉男が怪演。連続銀行強盗を巡って捜査中に、自ら名乗り出て、衆人監視の下、ガス化して密室の金庫を開けるところを見せる。それまで、観客を含めて、ガス人間については一切情報を与えずに、映画の中盤で正体を顕すという演出がドラマティックで見事。
神出鬼没のガス人間・土屋嘉男が新聞社のインタビューに応じ、気怠げに、過去の経緯を話し出す件も面白い。
怪人(犯人)と追手との距離感が極めて近いところや、その怪異性が、全体に江戸川乱歩の小説や映画の匂いを感じさせた。
土屋嘉男が慕う舞踊の家元に八千草薫。先日の『雄呂血』で観たばかりだったが、東宝の特撮映画にも出演していたとは知らなかった。昭和35年の作品なので、『雄呂血』より6年程前だが、こっちはカラーで美しさを楽しめた。顔の輪郭、頬や鼻の曲線の柔らかさ加減が、どれもいちいち魅惑的で、劇画風のエロチックさがある。
事件を追う女性の新聞記者は佐多契子。ずっと高田美和かなと思って観ていた。
偲ぶはずの三橋達也は刑事役だが、あまり印象はない。松村達推の方は、出演場面は少ないが、なかなか味わいがあった。
舞踊会の会場で、建物ごと爆破され、焼けこげたスーツだけが這いつくばって出てくる、ガス人間の最後は、『ラドン』のラスト・シーンに並ぶ、悲哀感漂う名場面であった。

ガス人間第1号 [DVD]

ガス人間第1号 [DVD]

東宝特撮 空想科学箱 DVD-BOX

東宝特撮 空想科学箱 DVD-BOX