『ビッグ・フィッシュ』

kenboutei2006-08-16

先日観た、『マッチスティック・メン』のアリソン・ローマンが出演しているとわかり、さっそく鑑賞。本当は監督のティム・バートン目当てで、買っておいたDVDだが。
現実にはあり得ない展開のサクセス・ストーリーに、最初は『フォレスト・ガンプ』に似ているなあと思いながら観ていたが、実は、一風変わった、父親と息子の和解の物語であった。
魔女、大巨人、不思議な村、サーカス、戦争での冒険・・・。父親が体験したという話は、ことごとく誇張されており、観客も俄には信じられないのだが、その誇張されたお伽噺の世界が、いかにもティム・バートン的ではある。ダニー・デビードのサーカス団長は、実はオオカミが変身した姿だったりする。
本来なら、この素敵なホラ話の世界にたっぷりと浸りたいところなのだが、そこに、あくまでそれを信じない息子が介在し、いちいち現実に引き戻すため、今一つ居心地が悪い。
父親の若い頃を演じるユアン・マクレガーと、今の父親役のアルバート・フィニーの姿形にギャップがあり過ぎるのも、感情移入を妨げる一因となった。(今の父親からすると、若い頃が格好良かったというのも、一つのホラ話なのかもしれないが。)
だがしかし、父の死を間近に控え、そのホラ話も全くの作り話ではなかったことに気づいていく息子が、これまではさんざん聞かされていた立場から、今度は死にゆく父親のために即席のホラ話を聞かせることとなる展開に至ると、それまでのもどかしさも吹っ飛び、実に感動的。
父の話していた世界の由縁の人々が、なるほど誇張したくなる程の畸形さは持つものの、それなりに現実的な姿で、葬儀にぞろぞろと集まってくる場面が一番好きだ。
それにしても惜しい。「ホラ話」を巡って対立する親子が最後は「ホラ話」で和解するという、原作の骨格と、その「ホラ話」の世界にリアリティを持たせる映像とのバランスが良くない。もっと別の演出の仕方があったはずと思えてならない。(もっとも、西欧小説のホラ話ジャンルや、親が子供に寝物語をする伝統などの、文化的背景への理解の濃淡によっても、受け止めは変わるのであろうが。)
妻役のジェシカ・ラング(とアリソン・ローマン)があくまで添え物的に扱われていたのも、残念。(お目当てのアリソンも、スチール写真ほど印象には残らない。)
ただ、次に観る時は、話の行方がわかっているので、最初のような違和感を持たずに、より感動できるような気もする。

ところで、この映画に出ていた、黒人の老医者、どこかで観たことがあると思ったら、あのTVコメディ『ソープ』のベンソンではないか! まだ生きていたとは。役者名が「ロバート・ギローム」ということも、今回初めて知った。↑上段、右端がベンソン。執事役で、ドアのチャイムが鳴る度に、「出てほしいっすか?」と家人に聞いていた。ちなみにこのコメディには、若きビリー・クリスタルもゲイ役で出ていた。日本語版DVDは・・・多分出ないんだろうな。