『瞳の奥の秘密』

kenboutei2010-08-28

銀座へ出て、ぽっかり時間が空いたので日比谷のシャンテへ。
割合と批評家の評判も高い、アルゼンチンとスペインの合作映画『瞳の奥の秘密』を観る。
舞台はアルゼンチン。定年退職した裁判官(刑事の役割も兼ねていたようだ)が、過去に取り扱った殺人事件のことを小説にしようとし、上司の女性キャリアと再会。事件を通して、過去の二人の秘められた思いも交錯する、サスペンス・ラブドラマ。
わだかまりのある過去に囚われることからくるフリクションを描く点で、原一男の『ゆきゆきて神軍』をふと思い浮かんだが、もちろん、あんな緊迫を強いる過激なドキュメンタリーでは全然なく、もっとエレガンスで甘美な正統派映画。
サッカー場での犯人追跡の場面が圧巻。上空の俯瞰撮影から観客席、通路を通ってフィールド、そして競技場外まで、大群衆の中での長回しのワンショット。
殺された若い女性の死体姿が抜群に美しかったのも印象に残る。
被害者のフィアンセの現在を尋ねて行くところなどは、だんだんヒッチコック・タッチになっていき、更には猟奇的なサスペンス味も加わるが、映画のトーンはうまく統一されているところに、監督の職人気質を感じた。(監督は、ファン・ホゼ・カンパネッラ)
裁判官、上司、被害者のフィアンセ、犯人。それぞれの「瞳の奥」に隠された秘密の多層性が面白かった。
良い映画を観た時の満足感あり。