三月国立劇場 『金門五三桐』

kenboutei2010-03-13

国立劇場の花形歌舞伎公演、通し狂言『金門五三桐』を観る。
橋之助扇雀が中心の奮闘公演。
五右衛門モノの通しは、『増補双級巴』として何度か観ているが(除く海老蔵の『石川五右衛門』)、今回のはそれとは少し違うようで、かなりコンパクトにまとめているが、それなりに楽しめた。五右衛門の父親、宋蘇卿の何たるかがわかって、それだけでも観て良かった。
もっとも、序幕の「柳町揚屋の場」はかなり退屈。お馴染みの「南禅寺山門の場」以外では、二幕目の「大炊之助館」が、敵味方の関係が目まぐるし変わり、原作の並木五瓶らしい奇想天外さがあった。
役者で良かったのは、第一に亀三郎。宋蘇卿の忠臣のはずが、最後は加藤正清になってしまうのも面白かったが、何と言ってもよく通る台詞、きっぱりと行儀の良い見得が、一際光っていた。終幕で正清姿で片足を曲げて形になる見得も、上げた足の親指は、しっかり立てていて、荒事の基本に忠実。また、中盤で見せる捕り手との立ち回りでは、祖父羽左衛門に似た容貌になっており、もういっそのこと、羽左衛門を襲名してほしいと思った程、惚れ惚れと舞台を眺めていた。
次に良かったのは、萬次郎の蛇骨婆。この手の役は、おそらく死んだ宗十郎の得意とするところだったと思うが(昭和51年の国立での復活時は誰が演じたのだろう?)、萬次郎も単にコミカルでなく、歌舞伎役者らしいコクが出ていて、予想以上に良かった。
橋之助は、宋蘇卿と五右衛門の二役。筋書のコメントを読んでも、よほど五右衛門をやりたかったらしく、それが葛抜け宙乗りの時によくわかった。五代目歌右衛門や延若の話を織り交ぜての台詞が微笑ましい。一旦3階に引っ込んで、今度は3階から宙乗りで舞台に戻ってくる演出も、珍しかった。
その前の「山門」では、台詞が少し軽い感じがした。
久吉の扇雀は、可もなく不可もなく。
三階さんの新人(?)、京由が可愛い。