『美貌に罪あり』

kenboutei2010-02-12

神保町シアターは、「オールスター映画 夢の祭典」という特集に変わった。(同時並行的に、ドラえもんの特集もやっている。ここがターゲットとする客層は、年寄りだけではないらしい。)
今日は、昭和34年の大映オールスター映画、『美貌に罪あり』を観る。監督は増村保造
山本富士子若尾文子野添ひとみ競演。男性陣は、勝新太郎川崎敬三川口浩。他に杉村春子
杉村春子は東京近郊の大地主だったが、農地解放後に残った土地で花卉農園を営み、借金をしながらも古い屋敷を守り、いずれ花の品種改良で、なんとかもうひと稼ぎを期待している。
しかし長女の山本富士子は、幼馴染みで品種改良に取り組んでいる近所の川崎敬三との結婚話には乗らず、東京で舞踊家勝新太郎の弟子となり、やがて勝新と結婚。
次女の若尾文子は、花卉農園で一緒に働く川口浩と良い仲だが、秘かにスチュワーデス試験を受け、これも実家を離れてしまった。
川口浩の妹の野添ひとみは、聾唖者で、障害者向けの職業訓練校(?)を抜け出し、家に戻ってくる。彼女は、秘かに川崎敬三を愛している。彼女が農園を守るには、何だか頼りない。
話は主に、周囲の反対を押して結婚し、舞踊の場を奪われ苦労する山本富士子勝新太郎組と、東京でのOLを満喫しようとする若尾文子と地元の田舎青年川口浩の恋の葛藤を中心に展開される。
野添ひとみは、喋れないことで表現に乏しく、また相手も地味な川崎敬三(役柄もそう)なので、三人の中ではスッポトライトを浴びる機会は少なかった。
あまり音楽を使わず、テンポ良く話が進む。オールスター映画といいながら、中身は戦前からの地主の没落、家族の崩壊を取り上げ、結構シリアスなドラマ。『鰯雲』を思い出させる。原作は川口松太郎
山本富士子は、当然ながら着物姿で終始し、すっきりとさっぱりと美しい。若尾文子は田舎育ちの野暮ったさと、スチュワーデスになっての美貌の同居が魅力的。
川口浩が、ぶっきらぼうだが爽やかで、意外と好感が持てた。(この時点ではまだ野添ひとみとは結婚していないのか。)
映画の終盤、守り続けた家を明け渡すお盆の夜、宴の後のがらんとした大広間で、杉村春子山本富士子が、外から聞こえてくる囃子にのって盆踊りを踊る場面が、実に素晴らしい。リズムに合わせての手や首のきびきびとした動作の美しさ。たった二人だけではあるが、盆踊りの魅力に溢れていた。
他には勝新と山本の新作舞踊も素敵で、この辺はさすがにオールスター映画の片鱗が残っている。
聾唖者に対する演出が、当時のステレオタイプで、今ならその手の活動家が黙っていないだろう。それ故、なかなか公共の電波には乗りにくいと察しられ、映画自体が不自由なものになっているのかもしれない。(何か不満があると、すぐに「なんみょーほーれんげーきょー」と団扇太鼓をどんどん叩く、隣のおばさんの演出も、この御時世では憚れるのかな。『王将一代』『煙突の見える場所』など、昔の映画には結構多いようだが。)
それにしても、このタイトルは何なんだ?