『緯度0大作戦』

kenboutei2009-05-06

連休最後は、映画で締める。(直前に思い立っただけだが)
京橋で再び再開した、「怪獣・SF映画特集」で、『緯度0大作戦』。
緯度0地点(経度は不明)の深海に築かれていた別の世界を描く。
オープニングの、ホリゾント風地球の映像に流れる、伊福部昭の音楽。いつものゴジラ・シリーズとはまた違った、それでいて間違いなく伊福部昭とわかる土俗的民族的旋律(ラヴェルの「ボレロ」に近い)のティンパニーと管楽器の音色に、心打たれる。伊福部昭の映画音楽の中でも、特に印象的で素晴らしい。
ストーリー自体は他愛無いが、特撮で描かれる、海底での潜水艦同士の攻防が、見事。水の流れの描写や水泡の扱いなど、海の中ということが、自然に納得させられる。また、海底火山の爆発での、多色インクを用いた噴煙の迫力など、これが実質的には最後のSF特撮となった円谷英二の集大成であった。
日米合作の映画で、宝田明ら日本人も英語で撮影し、アフレコで日本語に吹き替えている。アルファ号の艦長は、名優ジョセフ・コットン。攻撃する武器を持たないアルファ号を、自信なさそうな表情で操縦する(それでいて、相手の攻撃をうまくかわすのだ)姿が面白い。
カニックのデザインとしては、アルファ号より、敵方の黒鮫号の方が、格好良い。黒鮫号には、ハヤタ隊員(黒部進)も、髯を生やして乗っていた。
ジョセフ・コットンら海底人は、高度な文明と長寿を誇り、地上が平和になるまで監視を続けながら、科学者たちを秘かに連れて来たりしている(実質的な拉致だ)。地上での有名な発明なども、こっそりノートを差し替えてあげたりして、実は我々を支えてくれてきていたようなのだが、それでいて日本人科学者が発見した放射能の無害化技術の秘密はわからないらしく、ジョセフ・コットンと、彼の幼馴染みで悪役のシーザー・ロメロの間で争奪戦となっているのが、不思議であった。
シーザー・ロメロがライオンの頭に人間の脳や鳥の羽を移植して、グリフォンを作る場面は、蝙蝠人間(猿っぽい顔だが)の登場と相俟って怪奇趣味が強く、唐突に、乱歩歌舞伎の人間豹が脳裏をよぎってしまった。(あの舞台はだんだんトラウマ化しつつある。)
この映画は1969年の作品。既に『ミクロの決死圏』や『2001年宇宙の旅』などが公開されていた中で、東宝が世界に誇ってきた特撮が、あきらかに時代遅れになってきたことを痛感させられる映画でもあった。(逆に言うと、古き良き特撮映画の、最後の光だったのかもしれない。)

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