正月歌舞伎座・昼の部

kenboutei2009-01-03

平成21年の初歌舞伎。歌舞伎座昼の部、今日が初日。歌舞伎座さよなら公演の初日でもあるが、案外地味な印象。ロビーも客席も、演目も。
『祝初春式三番叟』富十郎の翁、梅玉の三番叟、松緑菊之助の千歳。錦之助と松江が後見。
翁が舞台正面で礼をするのは、本来神に対してのはずなのだが、最近の役者は押し並べて、観客にお礼しているような感じ。だから客の方もそれに対して拍手をしてしまう。この拍手で、本来持っているはずの三番叟の神聖な儀式性などは、一気に粉砕されてしまうような気がするのだが、まあ、しょうがないのかな。(『勧進帳』の弁慶の引っ込みの時の一礼も、同じような感じである。)
今日は、翁が出て来る前に、後見の二人が登場し、裃姿でご丁寧に、はっきりと、客席に向かって(主に一階席に向かって)礼をしていたので、後は、推して知るべし。
富十郎は、声朗々として大変元気。
菊之助の顔が浮腫んでおり、最初識別するのに時間がかかった。
俊寛幸四郎俊寛歌六の康頼、染五郎の成経、芝雀の千鳥、梅玉の丹左衛門、彦三郎の瀬尾。幸四郎梅玉染五郎芝雀は、前回の国立劇場と同じキャスティング。全然新鮮味がなく、かといって、歌舞伎座さよなら公演で出さねばならぬ程の決定版でもないと思うのだが。
幸四郎俊寛は、千鳥を船に乗せようと説き伏せる台詞に、熱が入っていて、いかにも幸四郎らしかった。「思い切っても凡夫心」からは、急に元気がよくなり、浪幕の上を飛び跳ねていたが、そこまではやりすぎではなかったか。
梅玉の丹左衛門は、回を重ねるにつれ、どんどん善人になっているようだ。
瀬尾が切られて、丹左衛門に助けを求める歌舞伎の入れ事で、「慈悲も無慈悲も身どもは知らぬ」(←不正確)で客席が沸かないのは、その伏線として同じ会話をするところが、梅玉と彦三郎でうまく噛み合っていなかったからだろう。(特に、彦三郎が、まだ台詞が覚束なかった。)
隣席の老夫婦がマナー悪く、係員に注意されても悪態をついていたのが気になり、後半のいいところで芝居に集中できなかった。
十六夜清心菊五郎の清心、時蔵十六夜吉右衛門が白蓮を付き合う。
時蔵十六夜の、花道の出が良かった。頭から被っていた白の手拭いをぱっと取って、口にくわえて顔を見せた時の、美しさ。非常に清楚で端正、品があってしかも若々しい。写真でしか知らないが、父の四代目時蔵によく似ていた。
菊五郎の清心の「しかし待てよ」は、形は良いが、台詞廻しは物足りなかった。
『鷺娘』玉三郎。引き抜きで変身していく様が見事。白から赤、赤から紺、紺から薄桃色、そして赤のぶっ返り、白のぶっ返り。鮮やかな色の変化に、客席もどよめく。
玉三郎の動きの魅力は、回転運動よりも、身体の上下運動に特徴があるのだと、今日は思った次第。
 
・・・それにしても、地味な舞台成果。筋書には4月までの演目も出ていたが、いずれを見ても・・・(略)。今後のさよなら公演は大丈夫なのか?