『おぼろ駕篭』

神保町シアター、6回目だったので、今日はタダで鑑賞。
伊藤大輔監督の『おぼろ駕篭』。昭和26年の松竹映画。
大奥の中臈争いの中で起こった殺人事件の犯人に仕立てられた佐田啓二の侍を、阪東妻三郎の生臭坊主と、月形龍之介の旗本、田中絹代の芸者らが協力して守り、真犯人をあばき出す。
山田五十鈴は、悪党側の一人として重要な役割なのだが、出番は少ない。ヒロインはむしろ田中絹代の方。そして主役はもちろん阪東妻三郎なのだ。
阪妻が坊主であるにもかかわらず、大勢の追手を一人であしらうことのできる剣の達人であるのも、これまで彼が演じてきたチャンバラ映画の記憶を観客が共有しているからこそ、何の違和感もなく受け入れることができる。
ラストが「河内山」と「京人形」のパロディになってしまうのも、当時の観客には、それだけ歌舞伎が身近だったということでもあると思う。
賄賂がはびこる、沼田の時代というから、これはおそらく田沼意次を暗示しているのだろうが、その時代に幕末の黙阿弥ものを持って来るという時代考証のデタラメさも、この手の映画ではご愛嬌。
月形龍之介伊志井寛、菅井一郎、加東大介、三井弘次など、バイプレーヤー揃いなのがまた楽しい。
土曜日の午前十一時の回だったが、いつも以上に高齢者比率が高かった。