『昨日消えた男』

kenboutei2008-12-18

神保町シアター。今日で5回目。ポイントカードで次回はタダで観られる。(1回1,200円で、6回目がタダ。見続けることで、実質1回1,000円になるということか。)
今日は、マキノ正博監督の『昨日消えた男』。昭和16年真珠湾攻撃の年の作品。東宝映画。
東宝ロゴマークの後に、「長谷川一夫 山田五十鈴主演」といきなりクレジット。ちょっとハリウッド映画みたいだった。その後、出演者が映像付きで紹介されるのも面白いし、顔と名前が一致するので有り難い。(ようやく、渡辺篤の顔を、しっかり認識できた。)
貧乏長屋で、嫌われ者の大家が殺され、長屋の住人のうち、その犯人が誰なのかを探る、結構本格的なミステリー。
なんでも、ダシール・ハメットの原案を小国英雄が脚色し、マキノ監督が9日間で撮ったという。
最後は遠山の金さんになってしまうところが、凄い、というか、驚いて仰け反った。
山田五十鈴は、長谷川一夫に、「いーっ」と憎まれ顔をするところが、とてもチャーミング。顔の表情がとても豊かだ。対する長谷川一夫も、お茶目な顔で返す。長谷川一夫は、声が魅力的だなあ。
高峰秀子が、落ちぶれた浪人の娘役で登場。可愛くて利発そうな顔つきは、この時点で既に出来上がっている。これは、ベルの映画であると同時に、デコの映画でもあったのだった。但し、台詞廻しは、まだ素人ぽかった。
江川宇礼雄が、堂々とした役人。どこか、今の橋之助に似ている。
川田義雄が、浪花節を口ずさむ、ちょっと剽軽な目明かし役。吉本興業所属だったとは知らなかった。
小国英雄の脚本は、長屋の人々をリアルに描き出しており、その後の黒澤映画(例えば、『どん底』や『赤ひげ』)に通じるものがあった。
フィルムの状態が悪いのがちょっと難点。