10月前進座『解脱衣楓累』

kenboutei2008-10-19

一年振りの、吉祥寺・前進座劇場。去年同様、当日券。
今年は、『解脱衣楓累』。南北の書き下ろしだが、何故か上演されずにいたものを発掘、前進座が昭和59年に初演したもの。その時は好評だったそうで、前進座のレパートリーとなり、今回が三演めとのこと。
累ものだが、コンパクトにまとめて、ストーリーのエッセンスだけ抽出しているので、南北らしい退廃的な魅力も、生世話のリアリティも感じられない、薄い舞台。まあ、これは、歌舞伎味のない今の前進座によるところも大きいと思うが。
津田恵一演じる呉服屋の番頭が、演歌を歌う大衆演劇的な場面が一番受けているのだから、観客の求めているものも、別のところにあるのだろう。
それでも、三幕目の与右衛門内の場での、およそこの物語に関わった人物が、次から次へと出入りしていく展開などは、南北の残した台本の面白さの片鱗を感じさせ、また、國太郎、広也が、以前よりもだいぶ歌舞伎っぽい味を出してきているところ、圭史の空月、矢之輔の与右衛門が、ベテランらしくうまかった点など、それなりの見どころはあった。
特に國太郎は、女形として、ようやく見られるようになってきたと思う。ただ、お吉と累の二役が、どれも同じ色合いだったのは、技量的にはまだまだということだが。
梅之助の不在が寂しい。(梅雀の不在は仕方がないが。)
この芝居、一度松竹系の役者で観てみたい気もする。