『タイム・マシン』

kenboutei2008-03-20

小説同様、SF映画の古典となっている、ジョージ・パルの『タイム・マシン』。
あまりにも有名な作品で、家具調の椅子型タイムマシンや地底人モーロックの造形なども、写真で馴染んでいたので、何だか既に観たような気分になっていたのだが、実際に映画として観るのは初めてであった。
小説の方はかなり昔に読んだだけで記憶は曖昧だが、基本的には原作に忠実な作品であったと思う。
タイムマシンという設定は、単純に「人類の未来はどうなるのか」という関心から用いられたギミックで、そういう意味ではこの映画は、SFのジャンルでいうと、そのタイトルから想像される、タイムパラドックスなどを扱う時間テーマではなく、未来テーマもしくは破滅テーマの範疇である。
そして、80万年後という超未来には、人類はどのように進化(あるいは退化)しているのかを、真っ正面から描いている、実に真面目な映画であった。と同時に、娯楽性もあり、もっと古めかしい映画かと思っていたが、特撮を含めてしっかりした作りとなっており、さすが黄金期(時期的にはもうピークは過ぎているだろうが)のハリウッド・メジャー作品である。
個人的には、イーロイ族の女性ウィーナを演じた、イベット・ミミューの、無垢な美しさに魅了された。
髪形や清楚で上品な顔立ちが、昔の日本の漫画で描かれる少女のイメージに近く、特に、石森章太郎(今は石ノ森と言うのか)の女性キャラに似ていると思った。いずれにせよ、日本人好みの女優である。
未来へやって来たロッド・テイラーに、過去の時代の女性の髪形を聞き、自ら髪の毛をアップにして、うなじを見せた時、なぜかイベット・ミミューは、舌を二、三度ペロッと出すのだが、その行為が印象づける無防備さ、白痴っぽさが、また魅力的であった。彼女の存在によって、この映画は不朽の名作になり得たのだとも言える。
核爆発により都市が壊滅する場面などの特撮は、東宝特撮に通じる手作りの懐かしさがあった。
映像特典が素晴らしい。おそらくテレビの特番だろうが、ロッド・テイラーをホスト役として、映画の結末の後日談的エピソードを交える。数十年後の本人がそのまま映画の役として登場するところが憎い。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』当時のマイケル・J・フォックスも出演。

タイム・マシン 特別版 [DVD]

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