『ヘアスプレー』

kenboutei2007-11-12

今度はリメイク版。まだ銀座でも上映していた。丸の内プラゼール。
ネットでいろいろ調べてみると、この映画は、オリジナルのリメイクというより、その前に一度ブロードウェイでミュージカル化された舞台版の映画化という位置付けのようだ。
極上のミュージカル映画
オリジナルがウォーターズ作品であったことは、主人公の母親役が男優であるということと、ウォーターズ自身がカメオ出演していることで、かろうじて理解できるが、そんなこととは無関係に、実に楽しく、ハッピーになれる、エンターテイメントのお手本のような作品に仕上がっていた。
太った女の子・トレーシーが主演ではあるが、結果としてジョン・トラボルタクリストファー・ウォーケンミシェル・ファイファーらのビック・ネームが、おいしいところを持って行った感じ。
何しろ、女装のトラボルタとその夫役のウォーケンが、アステア&ロジャースばりに踊るのである。この一場面があることを知っただけでも、映画ファンならば劇場に駆け付けずにはいられないはずである。
興奮するのは、やはりトラボルタの踊り。引きこもりキャラから一転してのはじけっぷりは、お約束といえばお約束だが、観ている方のお尻もむずむずして、椅子から少し浮きかけた。これがアメリカの映画館なら、総立ちで一緒に踊っているであろうことが、容易に想像できる。できればその踊りの中に、『サタデー・ナイト・フィーバー』のあの有名な振り付けが入っていたなら、もっとニンマリできたのだが。(あれは70年代のステップなので、この作品で取り入れられないのはわかっているが、ちょっとしたお遊びでやってほしかったな。『バック・トゥー・ザ・フューチャー』でのマイケル・J・フォックスのエレキ・ギターのような感じで。)
まあ、大変楽しい素敵な作品で、大満足ではあったのだが、先にウォーターズ作品を観てしまった者としては、何点か引っかかるところもあった。
一つは、トラボルタの女装メイクがあまりにも特殊メイク過ぎたこと。ディヴァインのように、ほとんど素で女性を演じることはさすがに無理だとは思うが、もっと本人の素顔がわかるようなメイクにはできなかったものか。まるでマペットミス・ピギーのようであった。
もう一つは、最後のダンス・コンテストの優勝者を、オリジナル版でのトレーシーから、黒人の子供に変えたこと。これではただでさえ脇役に食われていた主人公の影がますます薄くなってしまう。
とはいえ、トレーシー役のニッキー・ブロンスキーは、キュートで歌もうまく、愛らしかった。ただ、前髪だけを脱色したヘア・スタイルだけは、お婆さんに見えてしまって、いただけない。
オリジナル同様、人種差別問題もしっかり描いてはいるが、ここまで楽しいミュージカルになると、テーマは何でも良かったような錯覚にも陥る。
それにしても、この映画を語る時に、ジョン・ウォーターズの話をするオヤジは、確実に嫌われるだろうな。(自分のことだが)