『ヘアスプレー』

kenboutei2007-11-11

ひと月以上、ご無沙汰だった、DVD鑑賞。
ジョン・ウォータズの『ヘアスプレー』を選択。
最近、ミュージカルや映画で同じタイトルの作品が流通しているのは、うすうす知ってはいたが、まさかジョン・ウォーターズの映画がリメイクされることはなかろうと頭から思っていたので、どうやらそれらが本当にウォーターズ作品、つまりこのDVDをオリジナルにしていると知ったのは、つい先日のこと。で、タイミングもいいので、今回この映画を観てみることにした。
ジョン・ウォーターズの映画は、1997年に、ちょうど25周年記念で全米でリバイバル上映されていた『ピンク・フラミンゴ』しか観ていない。ディヴァインの怪演とともにカルト映画の代名詞とされているあの作品と比べると、『ヘアスプレー』は、ウォータース監督の初のメジャー進出作として、「毒気を抜いて」とDVDのパッケージにも書いてある通り、太った女子高生が、テレビの視聴者参加型ダンス番組で有名になるという、60年代初期R&B満載の、「健全な」映画であった。
しかしながら、そこはウォーターズ、高校生にもかかわらず、キス描写のどぎつさや、黒人街にまぎれこんだ白人を描く時のテンションの高さなどは、『ピンク・フラミンゴ』の過激さに通ずるものがあった。何といっても、主演の女の子の母親役が、女装の(というより、いつもの)ディヴァインなのであるから、その時点で「健全な」わけはないのであった。
(ディヴァインは、テレビ番組のプロデューサー役も演じていた。そのマルチな演じっぷりは、後のマイク・マイヤーズに影響を与えているのかもと思った。)
高校の特別クラスのシーンも、実にチープな猥雑感があり、ポルノ映画を観ているような錯覚に陥った。
女子高生が、テレビに映った恋人にキスする場面を、ブラウン管の裏側から撮るところも、ウォーターズ的変態描写である。
その一方で、当時のボルチモアの(或いはアメリカ白人社会の)、日常生活の中での人種差別意識をうまく浮き彫りにしており、この辺りは、カルト監督の反骨気質を感じさせた。
黒人街で、トリビュート的に登場したトゥーサン・マッコールの歌をバックに、路地裏で猥褻感たっぷりの抱擁をする高校生カップル二組、その背後を浮浪者風の黒人が歌を口ずさみながら通り過ぎ、足下にはドブネズミが這い回る場面が、奇跡的な美しさ。
最後のゴキブリ・ダンス(衣装もゴキブリ模様だ)と、爆弾バクハツというお約束的エンディングも、実に下らなくて楽しい。
ちょっとエッチで下品で、普通の大人が観たら顔をしかめるが、子供は大喜びという、昔のドリフターズのテレビ番組のような映画であった。
ジョン・ウォーターズは、精神科医として出演。
太っちょ女子高生の友達の、いつもアメを舐めている痩せた女子高生が、女子フィギュアスケートトーニャ・ハーディングに似ていた。
ディヴァインはこれが遺作となったそう。
次は、『フィメールトラブル』を観ようか。(リメイクされた『ヘアスプレー』がまだ上映中なら、そっちが先かな。)

ヘアスプレー [DVD]

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