歌舞伎座納涼歌舞伎・第一部

kenboutei2007-08-12

暑い!
『磯異人館幕末の薩摩藩での若者の恋を、生麦事件琉球国、イギリスとの政治的関係などを背景に織り交ぜながら描く。
勘太郎の薩摩切子職人が、素晴らしい。力みもなく、一人の女性を愛する等身大の若者を見事に演じてみせた。琉球の王女が勘太郎の精之介に、恋の告白をする。それを黙阿弥の渡し台詞よろしく、勘太郎がオウム返しで繰り返すが、その言葉は、そのまま自身の王女への恋の告白でもあった。その場面の勘太郎が、この舞台で一番良かった。そこに重なる澄んだ笛の音も、何とも素敵。
琉球の王女・琉璃に七之助だったが、まだ役の造形が定まっていない様子。政略結婚を受けざるを得ない運命を背負った王女にしては、ただの若い女性過ぎた。
猿弥、家橘が充実の演技で芝居を締める。
亀蔵がイギリス人役。舞台でカタコトの台詞を言う毎に客席から笑いが起こるのは、これまでのコクーン等での怪演故のものだろうが、気の毒といえば気の毒。
精之介の弟役で、血気盛んな薩摩藩士に松也。その松也を慕う娘に芝のぶ芝のぶが幕開きに花道から小走りで入ってくるところが、可愛らしかった。(最近、歌舞伎チャンネルでインタビューを受けていたが、素の芝のぶも、おっとりとして、可愛い。)
今の勘三郎が精之介を初演した時、「出世作」と言われたと筋書きに載っていたが、勘太郎にも十分そう言われる資格のある、今日の舞台であった。
『越前一乗谷本公演では初上演となる、戦後の新作舞踊。菊五郎劇団の『達陀』同様、こういう作品を作り出そうとしていた時代の意欲が興味深い。
冒頭、暗闇から徐々に明るくなり、紅葉を背景に尼の後ろ姿で浮かび上がる福助。その構図が美しい。
竹本に乗って、戦国時代の模様が語られる。郎党で勘三郎三津五郎が登場。切れのある踊りを二人で見せてくれる、贅沢なご馳走。
この後は、うとうとしながら。竹本連中はご苦労。
午後2時終演。
・・・暑い!