国立・鑑賞教室『野崎村』

kenboutei2007-07-14

歌舞伎の鑑賞教室は4年振り。『野崎村』で芝のぶがお染をやるということに惹かれたのだが、お光の福助が意外にも初役であるということも知って興味は倍加、三宅坂に行ってみることとした。
福助のお光、のれんを分けて出てくるところ、もう顔に満面の笑みを浮かべ、しかもそれで客席を見回すような仕種をするので、一気に期待感が萎んだ。
鏡で髪を整えるところは、懐紙を折り畳んで眉毛にあてる、あの一昨年2月の「人間国宝・野崎村」芝翫が見せた型。この後、一旦外した簪などを再び髪に戻す動作をするのだが、チョボに乗ったつもりか、かなり身体を反らしてリズミカルに腕を動かすのは、観ていた子供にはウケていたが(今日は「親子で楽しむ歌舞伎教室」となっていた。)、悪ノリというものだろう。
この後も、お染に対してだけでなく、単に周囲の話を聴いている時でも百面相のごとく顔の表情を変化させる。最後に久松を見送るところも、久松に向かって、手を振ったり身体を動かしたりと、過剰な演出。二度目の白無垢での出などは神妙で良かったところもあったが、全体にははしゃぎ過ぎ。
もう一人、期待していた芝のぶのお染だが、これはニンが違った。最初の花道の出からどこか違和感あり。むしろお光の方を観てみたい。
松江の久松。鎌を取って自害しようとする型は、やはり一昨年2月に鴈治郎(当時)が魅せた型である。
東蔵の久作は、さすがに義太夫を知っているだけに手堅いが、これもニンではないので、久作の持っている老人の頑固さと慈愛が渾然となった面白さまでは感じることはできなかった。
結局良かったのは、後半を語った葵太夫と、後家お常の芝喜松くらいかなあ。

歌舞伎の前の解説は、松江。十二支を扱ったのは前にも観たことがあるが、羊は今回は羊羹だった。(前に観た時は、確かちゃんと着ぐるみの羊を出していたような気がするが。)
「ちょっと、ちょっと」とか、「欧米か!」などのネタを出していたが、今日は親子主体の観客のため、微妙にスルーされていたのは、むしろ笑いに厳しい学生の反応を想像すると、良かったのかもしれない。親子一組が選ばれて舞台に上がったが、子供より母親が結構舞い上がっていた。(刺身代わりの羊羹を食べた時の母親の感想が、「ベリー・スイート」で、松江はここで「欧米か!」と突っ込むべきだった。)
最後に、「野崎村」に至る粗筋をスクリーンで紙芝居風に解説。アテレコは、今月配役の役者自身が勤めており、ナレーションは福助だった。