ディック『ドクター・ブラッドマネー』

読了。

久しぶりのディック。
核戦争後のアメリカを描く、典型的な破滅テーマのSFだが、決して古びていない。
始めのうちは、登場人物の多さと、時間軸が不連続となっていることに戸惑ったが、後半は一気に読めた。
ディック特有の、多層的な視点と精神世界を堪能する。
火星への有人飛行に失敗し、地球の周回軌道を周り続ける宇宙飛行士が、戻る術もなく、たった一人で、文明退化した地球へディスクジョッキーよろしく音楽や朗読を送信し続け、地球ではその放送が最大の娯楽になっているというシチュエーションも、なかなか面白かった。
かつてサンリオSF文庫から出ていた沢山のディック本は、ハヤカワや創元社から徐々に再刊されているようだが(本書もその一冊)、まだ5冊ほど残っているとのこと(未訳本もSFだけで4冊あるそうだ)。
古本屋で異常に高かったサンリオ文庫も、少しは安くなったかな。