『空中レヴュー時代』

kenboutei2007-03-17

アステア&ロジャース・コンビの誕生となった記念すべき映画をようやく観る。
二人は共に脇役で、主人公率いるバンドのメンバー。アステアはアコーデオン弾きで、ロジャースが歌手という役割。
プレイボーイ指揮者の主人公がブラジル人女性に一目惚れし、リオデジャネイロでひと騒動、というお話はどうということもない。不時着した島でのやり取りや、オープン前のホテルを巡る買収めいた話も全く面白味には欠けるが、こちらはアステアとロジャースが目当てなので、そんなことはどうでもよろしい。
そういう意味では、最初にジンジャーが黒のタイトなドレスで歌う姿の妖艶さに、まずうっとりする。まだ若いジンジャーの、スタイルの良さ。決して痩せすぎず、適度に肉感的で、少し猫背に肩を落とし、気怠げに見える独特の姿形を、久しぶりに堪能する。
二人のコンビを決定づけたという、リオでの「カリオカ」ダンス。男女が額をくっつけ合いながら、情熱的に踊るラテンのリズム。観ているうちに、ムズムズしてくる、歌手のジンジャー。じゃあ踊ろう、ということで、アステアとロジャースは、舞台中央の誰も踊っていない、まさに二人のために用意されたステージに導かれ、踊る。ドレスの裾をふわりとひるがえす、ジンジャーのダンス・スタイルは、もうこの時点で確立されている。
カリオカのリズムに合わせ、額をくっつけて、華麗にステップを踏む二人は、優雅さもさることながら、若々しさと情熱に溢れ、脇役でありながら、この映画の最高の見せ場であったことは、言うまでもない。
アステアが単独でタップを見せる場面も見事。
ラストは、水中レビューに対抗した、空中レビューだが、双翼機の翼の上に固定された女優陣が、いつの間にか空中ブランコまでやってしまうハチャメチャさが楽しい。こういう映画に突っ込みを入れるのは野暮というものである。
それにしても、アステアとロジャースのダンスを観ていると、本当にウキウキして、我を忘れて魅入ってしまう。
これが映画の楽しさなのだと、心から思う。