2月文楽公演 一部〜三部

kenboutei2007-02-12

連休最後の日。自転車で三宅坂東京マラソンを控え、皇居前はさぞ沢山の人が走っているのだろうと思っていたのだが、それほどでもなかった。
国立劇場の前庭には、開場三十周年記念に玉男、住大夫らで植樹した紅梅、白梅が、もう咲いていた。
今月は、時代物を各部一作ずつという、わかりやすい構成。予想はしていたものの、通しで観ると、相当疲れ、帰宅してからは何もする気になれなかった。
一部『奥州安達原』
歌舞伎では何度か観ているが、文楽では初めて。・・・と思っていたのだが、後で調べると5年前に観ていた。(全く覚えていなかったとは・・・)
勘十郎と玉女で貞任、宗任を遣う。今後の文楽人形を牽引する二人で締めるラストは壮観だったが、それ以外はあまり感心しなかった。(また忘れそうだ。)
二部『摂州合邦辻』
悲しき『合邦』。玉男の死だけでなく、もはや他の長老たちも、ここまで高齢化しているのかと、今日程痛感したことはない。玉手を遣う文雀は足取りも覚束なく、合邦の文吾も、いつの間にか痩せ細ってしまい、かつての力強さと流麗さが消え失せていた。切を二人で分けて語る綱大夫、住大夫は、共に弱々しく、床の姿が小さく見えて仕方がなかった。
若手の成長はあるものの、今ここにいる大夫、人形遣いが、玉男・簑助と共に近年の文楽ブームを支えていたのである。その黄昏が近づきつつあることを、自分としても認めないわけにはいかない、そんな舞台であった。
出来そのものより、そんな思いが頭から離れなかったことが、もしかしたら、これから記憶に残るのかもしれない。
「庵室」の前に「万代池」がつく。チャリっぽい場で面白かったが、思いのほか剽軽な合邦が、次の場の悲劇の合邦と落差がありすぎるので、違和感も残る。
三部『妹背山婦女庭訓』
道行と「御殿」。簑助のお三輪。二部の「合邦」の影響か、簑助も何か精彩を欠く印象を持ってしまった。
最後の「入鹿誅伐の段」、首を刎ねらても、口から火を吹きながら宙を飛ぶ入鹿が面白い。

・・・実は今日は寝不足で(一昨日久しぶりに一時間以上ぶっ通しで泳いだのだが、一日経ってからその筋肉痛の症状が出て、なかなか眠れなかった。)、観劇する体調としては、あまり良くなかった。通しで一度に観るのは効率的なのだが、体調による舞台イメージも全部に及んでしまうので、本当は分けて観た方が良かったかもしれない。(そうすると、『合邦』のせつなさは、感じなかったかも。)