『風の中の牝雞』

kenboutei2007-01-03

正月恒例(と昨年決めた)の、小津DVD鑑賞。まだ未見の作品から、『風の中の牝雞』を選ぶ。
小津の作品の中では、かなり異色。ローアングルのカメラは小津調だが、そこに映し出される対象が、小津にしては猥雑で、しかも子供の入院費用を捻出するために一度だけ身を売る田中絹代や、そのことを知って苦悩する佐野周二らの演技もややエキセントリックで、特に戦後の小津の代表作に親しんでいる者にとっては、かなり戸惑う。
生活のための売春というテーマも、当時とは貞操観念の異なる現代から観ると、やや滑稽感すら感じてしまうのも事実。
とはいいながら、劇的な話が展開されていても、最初と最後は工場の風景などの空ショットでまとめているのが、やはり小津監督であった。
階段から落とされたり、強姦まがいに夫に犯される田中絹代の被虐性も、一つの見所。